【動画】スッキリ!なナマコのうんちが偉いわけ

排泄、呼吸、食事、戦闘をするうえ住居にもなる驚異のお尻

2018.08.31
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 同じナマコを別の種のカクレウオと共有する魚もいる。しかし、そうでない場合は縄張り意識が強く、すみかを守ろうとする。ほとんどの種は宿主に害を与えないようだが、少なくともカクレウオ属は、ナマコの生殖巣を食べることがわかっている。

 小型のエビやカニもまたナマコのお尻のまわりに集まり、腹足類やカイアシ類、扁形動物に加え、たくさんの生きものが体の他の部分に寄生している。

「ナマコはそれ自体、動く生態系のようなものです」とマー氏は言う。

「いつ見ても平和な生活」

 世界中の海には、約1250種のナマコが生息している。生息場所はさまざまだ。砂の中に完全に体を埋めるものもいれば、海中を漂いながらサンゴのように小さな餌を取り込むものもいる。(参考記事:中川翔子インタビュー「「しんかい」に乗って奇跡の旅へ」

 また、動画のナマコのように、海底を這って堆積物を吸い込んだり、あるいはたくさんの触手を使って食べるものもいる。

「食事は少しずつ、何度も繰り返します」と、米ワシントン大学の海洋生物学者で名誉教授のリチャード・ストラスマン氏は言う。「いつ見ても平和な生活だと思います」

 砂に埋もれた有機物を食べるので、ナマコが出すものは入るものより実質的に「きれい」だ。生きものによって堆積物がかき乱され、その中の物質が移動するこの過程を、科学者たちは「バイオターベーション(生物擾乱)」と呼んでいる。これは、生態系に非常に大きな影響を与えている現象だ。

【参考ギャラリー】奇妙で神秘的なガラパゴス沖、写真10点(写真クリックでギャラリーページへ)
ナマコは普通、海底に張り付いている。だが、この写真のナマコは違う。体を前後に曲げ、小さな扇形の器官を動かして泳ぐ。(Photograph by Ocean Exploration Trust)

想像をはるかに超えた価値

 ナマコの排便なんてくだらないと思う方もいるかもしれない。だが、そのうんちには想像をはるかに超えた価値が秘められている。

 2012年に学術誌「PLOS ONE」に掲載されたある論文によれば、海底に有機物がどんどん積もらないのはナマコのおかげもあるという。そのために、藻類の爆発的な増加が抑えられているかもしれない。藻類が増えすぎると、死骸が分解されるときに酸素が消費され尽くされて、他の生物が窒息してしまう。いわゆる赤潮だ。(参考記事:「赤く染まる豪州の海、藻が大量発生」

 また、2010年に「Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom」誌に掲載された研究によると、亜熱帯地方では、ナマコがそばにいる方が海草の成長が早いという。ナマコが多く水揚げされている場所では、海草の育ちは悪かった。

 中国をはじめとする東アジアでは、ナマコを調理したり、干して加工食品にしたりすることが多い。近年、その需要が伸びつづけている。特に中国の需要をまかなうため、商業的価値がある70種以上のナマコが乱獲されている。

 これはさまざまな問題を引き起こしているが、とりわけ気候変動にさらされるサンゴ礁の保護の観点で注目されている。ナマコは消化活動を行う際に、サンゴの骨格に欠かせない炭酸カルシウムを放出する。また、ナマコの排泄物は周辺の海水のアルカリ度を上昇させるので、サンゴに悪影響を与える海水の酸性化を和らげる効果があると考えられる。(参考記事:「【動画】ウミシダ、温暖化する未来の海の王者に」

「うんちは、みんなの笑いを誘うすごいものです」とマー氏は話す。「しかし、生態系にとっては、とても大切なものでもあるのです」

文=JASON BITTEL/訳=鈴木和博

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