絶滅クマのDNA、ヒグマで発見、異種交配していた

「ホラアナグマは現生生物のゲノムの中に生き続けている」と研究者

2018.08.30
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種の絶滅とはどういうことなのか

 ホラアナグマが絶滅した理由を解明するため、バーロウ氏のチームは個体数がどのように増減していたのかを探った。これについては、3万5000年以上前に生きていた4頭の耳の骨から採取されたDNAから推測できる。

 はじめに、研究者らはホラアナグマとホッキョクグマとヒグマの全ゲノムを比較した。当然ながらふたつの現生種同士は、ホラアナグマと比べると互いに近しい関係にあった。ところが、個々の遺伝子の変異を見てみると、それよりも複雑な構図が見えてきた。

 動物のゲノムはとても大きく、なかにはさまざまな変異がランダムに起こる遺伝子がある。異種交配がない場合、別の動物の同じ遺伝子におけるこうした変異は、それぞれで独立して偶然に起きており、意味のある関係は見出せないはずだ。ところが、クマの研究者たちが発見したのは、そうしたものとは異なっていた。(参考記事:「2種が1つに、“逆転進化”していたワタリガラス」

ホラアナグマ(Ursus spelaeus)の頭骨を手にする研究者。ホラアナグマは現生のヒグマより体が大きく、より多く植物を食べた。(PHOTOGRAPH BY ANDREI POSMOȘANU)
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「もしもゲノムの中で、ホラアナグマとヒグマのほうが、ホッキョクグマとヒグマよりも過剰に似ている場所が見つかるなら、そこには何か別の要因があったはずです」とバーロウ氏は言う。「その何かが異種交配です」

 今回の研究ではこの痕跡以外にも、ゲノムを精査する中で、ヒグマとホラアナグマのDNAの中に実際にお互いの断片があることが確認された。(参考記事:「クライメンイルカ、交雑で誕生か」

「ヒグマとホラアナグマが異種交配していたというのは、わたしにとってはまったく意外ではなく、むしろ自然なことだと思います。彼らの外観はよく似ていますし、生きていた時期と地域も重なっています」と、米イーストテネシー州立大学の古生物学者、ブレイン・シュバート氏は言う。「しかし今回の論文が出るまでは、こうした考えはひとつの推測に過ぎませんでした」(参考記事:「【動画】毒ヘビの異種がメス争い、野生で交雑?」

 ホラアナグマのDNAがヒグマの中に残されているというのは、ネアンデルタール人の影響が今も人間のゲノムに残っている状況とよく似ている。しかし研究者らは、そこにはいくつか大きな違いがあると語る。

 そのひとつは、現生人類とネアンデルタール人が、ヒグマとホラアナグマよりも近い関係にあるということだ。また、これまでに解析された人間のDNAの量に鑑みると、人間とその絶滅した近縁種について調べる方が、クマを調べることに比べてはるかに容易だ。人間の場合、古代の近縁種のDNAは、われわれの免疫、体毛の構造、標高の高い場所で暮らす能力などに影響を与えている。対して、データの量が少ないせいで、ヒグマがホラアナグマの遺伝子の影響を受けているかどうかを確かめるのは難しい。(参考記事:「ネアンデルタール人のゲノム解読、我々の病に影響」

 それでもバーロウ氏は、絶滅から何万年もたっているホラアナグマから、科学者は大事なことを学ぶことができると述べている。「これはすばらしい発見です。種の絶滅という言葉の意味について、哲学的なレベルで考えさせてくれるのですから」

【参考ギャラリー】大迫力!のグリズリー百面相 写真10点(写真クリックでギャラリーページへ)
イエローストーン国立公園を歩くグリズリー。(PHOTOGRAPH BY RONAN DONOVAN、 NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

文=Michael Greshko/訳=北村京子

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