少女の骨は「ヘテロ接合性が大きかった」と、米カリフォルニア大学サンタクルーズ校のコンピューター生物学者リチャード・E・グリーン氏が言うように、交雑だとわかったのだ。同士は、今回の研究に携わっていない。
古代、交雑していたのはデニソワ人とネアンデルタール人だけではないと考えられている。ネアンデルタール人は、おそらくアフリカを出た直後から現生人類と交雑をはじめている。今日、ほとんどのヨーロッパ人とアジア人のDNAの約2パーセントはネアンデルタール人に由来するものだ。同じように、デニソワ人の痕跡も残っていて、現代のメラネシア人のゲノムの4~6パーセントはデニソワ人から受け継いだものだ。(参考記事:「フローレス原人は現代の島民の祖先か? 最新研究」)
交雑したヒト族と私たちに直接的な類縁関係があるかどうかを特定するのは難しい。しかしライク氏は、デニソワ人の祖先をもつ人は全員、多かれ少なかれネアンデルタール人の祖先をもっていると言う。
ヒト族の交雑はよくあった?
新たな研究は、ヒト族同士の交雑が以前考えられていたよりも一般的だった可能性を示唆している。というのも、これまでに塩基配列が決定されたヒト族はほんの一握りという状況で、今回交雑による第一世代の子が見つかったからだ。スロン氏は、この確率は「衝撃的」だと語っている。
ただ、グリーン氏は、その原因はサンプリングの偏りのためではないかと指摘する。洞窟では骨が保存されやすいし、おそらく多様な集団が出くわすことも多かっただろう。「洞窟は更新世ユーラシアの婚活バーのような場所だったかもしれません」と氏は冗談っぽく続けた。(参考記事:「ネアンデルタール人は小集団で生活か」)
研究が進み、ほかにも交雑の痕跡がわかっている。少女のデニソワ人の父親にも、ネアンデルタール人の祖先がいた形跡がある。また、2015年には、ルーマニアの洞窟から、わずか4~6世代前にネアンデルタール人の祖先がいた人の顎の骨が発見されている。(参考記事:「4代前にネアンデルタール人の親、初期人類で判明」)
今回の発見は、ヒト族どうしが自由に交雑する古代世界の様子を垣間見せてくれると、ライク氏は言う。「こうした発見があるたびに、人類に対する見方が大きく変わります。ワクワクしますね」
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