少女の両親は、ネアンデルタール人とデニソワ人

ヒト族の交雑を裏付ける直接的な証拠が見つかり、ネイチャー誌で発表された

2018.08.24
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 その後の研究により、デニソワ人がネアンデルタール人と近縁で、約39万年前に共通の祖先から分岐したことが明らかになった。彼らは、ネアンデルタール人が絶滅に向かいはじめた4万年前頃まで生きていたようだ。(参考記事:「【解説】世界最古の洞窟壁画、作者はネアンデルタール人?」

 では、デニソワ人は、どんなヒトだったのだろう。外見は? 何人ぐらいいたのか? 発見されたシベリアの洞窟のまわりだけに生息していたのか? 疑問をあげればキリがない。一番の問題はデニソワ人の化石が非常に少ないことだ。科学者がデニソワ人について知るためには、同じ洞窟から発見された4人のデニソワ人の3本の歯と1本の小指の骨という、ごくわずかな手がかりに頼るほかないのだ。

動物の骨に紛れて放置されていた少女の骨片

 今回の研究に使われた骨は、2012年にデニソワ洞窟で発見されたもの。分析の結果、約9万年前に13歳前後で死亡した少女の腕か脚の骨の破片であることがわかった。

 幅が5ミリ程度しかないこの骨片は、見た目からはヒト族のものとはわからない。実は、同じ洞窟で発見されたライオンやクマやハイエナなどの数千個の骨片と一緒に置かれ放置されていたものだった。

 数年後、英オックスフォード大学のサマンサ・ブラウン氏が、放置されていた数千個の骨片に含まれるコラーゲンペプチドを調査して、それぞれの骨がどの動物かを分類した。その過程で、今回調査されたヒト族の骨片が見つかったのだ。

 スロン氏は発見されたヒト族の骨片のミトコンドリアDNAを調べた。ミトコンドリアDNAの遺伝物質は母親からのみ受け継がれる。すでに、このときの分析結果は2016年に「ネイチャー」に発表され、この骨がネアンデルタール人を母にもつヒト族のものであることが確認されている。

「これだけでも大興奮の発見でした」とスロン氏は言う。「けれども核DNAを調べはじめると、興奮はさらに高まりました」。核DNAは母親と父親の両方から受け継がれるため、父系もたどることができる。「そのとき、この骨のDNAに少し変わったことがあることに気付いたのです」とスロン氏。

 まず、父系はデニソワ人の遺伝的特徴とはっきり一致した。ただ、この少女のゲノムは驚くほど多様性に富んでいた。そこで両親の遺伝的な近さを調べるため、ヘテロ接合性を調べた。両親が同種であればヘテロ接合性は小さく、ヒト族の別々の種ならヘテロ接合性は大きくなるのだ。

次ページ:ヒト族の交雑はよくあることだったのか?

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