カナダの絶滅危惧種 22匹からの再生劇

保護団体の献身的な努力で個体数が増えつつあるバンクーバーマーモット

2018.08.23
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絶滅の危機に瀕しているバンクーバーマーモット(Marmota vancouverensis)。トロント動物園で撮影。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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 バンクーバーマーモット(Marmota vancouverensis)は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州にあるバンクーバー島だけに生息する、大きなイエネコほどになるリスの仲間だ。近縁種のシラガマーモットが白っぽい毛皮を持つ一方、バンクーバーマーモットの毛皮は茶色く、鼻先や胸に白い部分が見られる。

 15年前、研究者グループの年次調査で、野生のバンクーバーマーモットが22匹しか確認できなかった。この報告を知った保護活動家たちは、野生のバンクーバーマーモットは1年以内に絶滅してしまうだろうと考えた。

 そこで、絶滅を防ぐために、人間が育てたマーモットを野生に戻して増やそうとしたが、当初は飼育環境下では交配がうまくいかず、また野生に返した飼育下のマーモットは冬眠もせず、ピューマに殺されることもあった。

 バンクーバーマーモットの保護活動を行っている「マーモット再生財団」で飼育下繁殖コーディネーターを務める獣医師のマルコム・マカディー氏は、「打撃に次ぐ打撃でした」と当時を振り返る。(参考記事:「白い斑点がかわいい有袋類フクロネコが繁殖」

 財団の理事、アダム・テイラー氏も「絶滅は避けられない」と考えていた。だが、あきらめることはせず、さらに保護活動に力を入れた。

 理由は明らかだ。マーモットは、この地域の生態系にとって重要な役割を果たしている。それに、とてもかわいらしい。「本当に、野生の動物でこんなにかわいいものはいないだろうと思うのです」とテイラー氏は言う。同氏に言わせれば、マーモットは「まるで生きているテディベア」だ。

 バンクーバーマーモットは巣を、山岳地帯の石が散らばり、冬になると雪崩が起きるような場所に作る。人間が近づくには、木材運搬用の林道を車で何時間も走り、さらに徒歩で急斜面を登らなければならないような場所だ。

 ちなみに、冬眠期間は5~7カ月で、春になると亜高山帯で繁殖する。主食は、山麓の厳しい環境に咲く色鮮やかな花。親子や夫婦は鼻と鼻を突き合わせてあいさつし、子どもたちはきょうだい同士で遊び回る。

 実は、バンクーバーマーモットの個体数が初めて調査されたのは1980年代で、当時は300〜350匹と推定された。90年代に入ると数が激減。オオカミ、イヌワシ、ピューマなどの捕食行動の変化が原因だが、森林伐採でたまたまできた空き地にすみついたことが、その後のマーモットたちの運命を大きく変えた。

【参考動画】オリンピックマーモット
若いハクトウワシから逃れるオリンピックマーモット。このマーモットは、米ワシントン州オリンピック国立公園にしか生息していない。(解説は英語です)

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