【動画】サメよけに磁石が威力を発揮、保護に朗報

「あまりにうまく行ったので驚きました」と研究者

2018.08.21
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漁業にもメリットがある

 8カ月にわたり1100個近いカゴをモニターした結果、平均すると、磁石をつけたカゴにかかるサメは、ほかのカゴに比べて30%少ないことが明らかになった。サメが減ったことで、カゴにかかるゴウシュウマダイの量も30%増加した。

「目的としない魚がかかるのを減らす手段は、それ自体がクールです」とラウール氏は言うが、経済的なメリットもある。1個のカゴに5ドルから10ドルの磁石をいくつか取り付けるだけでカゴにかかるサメを減らしてゴウシュウマダイの漁獲量を増やせるなら、資金的に無理なくサメを保全できると氏は言う。

 さらに、一部の漁師は、目的とする魚を獲る効率が上がったおかげで、仕掛けるカゴの数を減らせたと言っていた。カゴの数が少なくなれば、海で失われる漁具の数も減り、そうした漁具により海洋生物が傷つく問題も軽減できる。(参考記事:「【動画】網がからみついたジンベエザメを救出」

 ラウール氏は、カゴに磁石を取り付ける手法は世界のほかの海域でも有効だろうと考えている。今回の研究でカゴにかかったサメは絶滅のおそれはない種だが、ラウール氏は、同じ手法が、ほかの海域の絶滅の危機に瀕するサメの保護に役立つかもしれないと期待している。

「必要なのは責任ある漁業」

 磁石はカゴからサメを遠ざけるのにはよいようだが、この技術をより広い範囲で応用するのは、そう単純ではない。

 今回使われた磁石は永久磁石なので、電流や外部磁場なしに磁力を保てる。しかしラウール氏によると、この磁石が作る磁場の範囲は20cm程度であるという。カゴの入り口に磁石を取り付ければ、カゴに頭を突っ込もうとするサメをよけるのには有効でも、釣り針への応用は期待薄だ。また、海水浴をする人が磁石を身につけていても、サメよけにはならないだろう。(参考記事:「相次ぐサメの襲撃、防衛策は?」

 ある研究では、磁石でガラパゴスザメが釣り針にかかるのをある程度防げたが、サメ同士で餌の奪い合いになると、磁石の効果をものともせずに餌を奪うサメが出てきた。また別の研究からは、延縄(はえなわ)漁の影響を最も受けているヨシキリザメとアオザメは、磁石を取り付けた釣り針でよけられるどころか、かえってかかりやすくなってしまうことが明らかになった。(参考記事:「ヨシキリザメが大接近」

 このアオザメの研究に参加した海洋生物学者セバスチャン・ビトン・ポルスモゲ氏は、延縄の釣り針に取り付けられるような磁石は、大型のサメをよけるには小さすぎるのかもしれず、取り付けや維持も手間だろうと言う。(参考記事:「大洋の稲妻 アオザメ」

 しかし、「オーシーズ保全財団(O’Seas Conservation Foundation)」のサメ学者で、ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受けるクレイグ・オコンネル氏は、中に磁石を入れた長い塩ビパイプで作った柵で、より広い範囲で、ホホジロザメとオオメジロザメが入ってこないようにすることに成功している。柵の反対に餌を置いても、サメたちは近づいてこなかった。現在は、浜辺にサメが近づかないように網を設置するのが普通だが、海洋生物が網に絡まってしまうという欠点がある。オコンネル氏は、将来は自分たちの手法がこうした網に取って代わることを期待している。(参考記事:「奇跡のサメ写真撮影秘話、数々の偽写真のネタにも」

 海洋生態系をより健全に保つには、新しい漁業技術の発明が必要不可欠だとオコンネル氏は言う。(参考記事:「太平洋ゴミベルト、46%が漁網、規模は最大16倍に」

「必要なのは、もっと責任ある漁業です。目的としないサメを捕まえるのを減らすことができれば、それは正しい方向への一歩だと言えます」

【関連ギャラリー】襲撃するサメ集団、産卵するハタ、驚異の光景に密着3000時間 写真7点
サメに捕らえられたハタ。サメの方がハタよりもずっと勝率は高いだろうと思われるが、実はかなりの獲物を取り逃がしていることに、バレスタ氏は気づいた。「この矛盾に、心が揺さぶられました。サメは、単なる殺し屋というわけではないのです」(PHOTOGRAPH BY LAURENT BALLESTA)

文=Joshua Rapp Learn/訳=三枝小夜子

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