爪、歯、骨など身体部位への需要が高まり、ライオンが直面する危機は増大し続けている。(PHOTOGRAPH BY JAK WONDERLY)
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 7月16日、南アフリカ共和国は、輸出できるライオンの骨の数をほぼ倍増させ、年間枠を800頭から1500頭に拡大すると発表した。

 すでにアフリカ全域で個体数が減少しているライオンが、新たな脅威に直面している。骨、歯、爪など、ライオンの体の部位に対する需要が高まっているのだ。こうした体の部位は、主に東南アジアで、伝統薬や装身具に使うために盛んに買い求められている。

 ライオンの密猟は違法であり、身体部位の国際取引も大部分が禁止されている。しかし南アフリカ共和国では、ライオンを繁殖・飼育する施設で出た骨の輸出は合法だ。この事業については、飼育施設の劣悪さが指摘されているほか、いわゆる「キャンド・ハント」(囲いの中の狩り)を提供していることも問題視されている。客は施設に料金を払ってライオンを殺すことができ、オプションで頭や皮を狩猟記念品として持ち帰ることもできるのだ。(参考記事:「動物を殺して動物を救えるか?「娯楽の狩猟」とは」

 今回の輸出枠拡大について野生動物の専門家は、アフリカのライオンなどネコ科動物の身体部位の密輸を助長し、害をもたらすだろうと主張する。こうした取引の需要は高まっており、そこにうわべだけの正当性が与えられるためだ。(参考記事:「動物を救うために殺してもいいのか?」

 ネコ科動物の国際的な保護団体「パンセラ」の最高保護責任者を務めるルーク・ハンター氏は、「大変失望しています」と嘆き、骨格輸出に科学的な正当性はないと付け加えた。

飼育施設にライオン8000頭

 南アフリカには、飼育場や飼育施設に最大で8000頭のライオンが暮らす一方、野生に生息するライオンの成獣は1300~1700頭。アフリカ全体では最大2万頭が生息しているが、1993年から2014年の間に43%急減した。

 南アフリカ環境省はニュースリリースの中で、飼育施設で保管され、今も増え続けているライオンの骨を減らすといった目的のため、輸出枠拡大は必要と述べている。同省には何度もコメントを求めたが、回答は得られなかった。

 同省はリリースでこう述べている。「ライオンの骨に対する需要が現に存在するなか、飼育・繁殖施設からの供給が制限されれば、ディーラーは在庫を違法に入手する、あるいは飼育下繁殖と野生のライオンの両方を密猟するなど、別の手段を試みる可能性がある」

 骨の合法取引が違法取引を相殺することになり得るのか、どのような正当な理由があって、輸出枠をこれほど増やすのか。いずれの点についても、南ア政府は根拠や説明となる科学的データを示していない。

特集ギャラリー:毒殺される野生動物(2018年8月号)
「マーシュ・プライド」という名で知られる群れの若い雌ライオンが、2015年に殺された。ケニアのマサイの人々が仕掛けた、毒入りのウシの死骸を食べたのが原因で、ほかにも2頭が命を落とした。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES)

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