南アがライオン骨の輸出枠を1500頭に、ほぼ倍増

減りつつあるライオンに新たな脅威か、専門家は「闇取引を助長」と非難

2018.08.02
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 非営利の動物福祉・保護団体「ボーン・フリー基金」によれば、こうしたライオンの骨格のほとんどはベトナムかラオスに輸出されるとのことだ。両国とも、野生動物の違法取引に深く関わっていることが明らかだという。ライオンの骨は、トラの部位の代替品としての使用が増えている。トラを使った製品は薬効があると一部で信じられ、非常に人気が高いからだ。例えば「虎骨酒」はステータスシンボルとされ、強さや気力を授けると言われている。(参考記事:「【動画】潜入!トラ闇取引の現場、解体して販売」

 野生のトラは4000頭未満しか生息しておらず、絶滅が危惧されている。野生生物の取引を規制する国際条約、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の下では、いかなるトラ製品の取引も違法だ。(参考記事:「ワシントン条約会議が浮き彫りにした9つの現実」

合法取引は違法取引の一部

「ライオンの骨、歯、爪はトラと見た目が似ていて、間違えて表示されることもよくあります。ライオンの骨の合法取引を認めることは、こうした製品への需要を高め、うわべだけの正当性を与える後押しになっているのです」。こう話すのは、環境保護団体「エンバイロンメンタル・インベスティゲーション・エージェンシー(EIA)」で野生生物キャンペーンと研究を担うアロン・ホワイト氏だ。

 EIAは主に2015年以降、ライオン製品が「トラ由来」と表示されていた証拠を8件押収している。だがホワイト氏は、実際に起こっている件数はもっと多いだろうと話す。

 大型ネコ科動物製品に対する需要が高まれば、ライオンを密猟するさらなる動機となる。実際、モザンビークなどアフリカの数カ国では、ここ数年で密猟が増えている。モザンビークで密猟反対を訴えている研究者のクリス・エベラット氏によると、リンポポ国立公園のライオンは2012年に67頭だったが、2017年には21頭に減少した。計49頭のライオンが密猟され、密猟事件の6割で、顔や脚など体の一部が取り去られていたという。(参考記事:「血に染まるサイの角」

南アフリカ共和国にある詳細不明の繁殖施設で、囲いの中にいるライオン。同国では8000頭ものライオンが飼育下にある。(PHOTOGRAPH BY PAUL FUNSTON, PANTHERA)
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 合法的に入手されたライオンの部位が取引されるネットワークが穴だらけなのは周知の事実だと、ハンター氏は指摘する。輸出入が厳しく規制されていない限り、骨の出所を見分けることも、密猟された部位がまぎれ込まないようにすることも極めて難しい。合法な取引を認めると、不正な業者は簡単に違法製品をつかませることができる。こうした状況は、象牙取引ですでに明らかだと、ホワイト氏は付け加えた。(参考記事:「ゾウを殺してゾウを保護するという矛盾」

 2016年、野生動物の保全状況を評価している国際自然保護連合(IUCN)は、「アフリカ東部・南部の野生ライオンの体の部位が、象牙を中心とした大規模な違法取引に引き込まれ、アジアへ向かう可能性がある」と警告した。それが今、まさに現実となっている。

 ライオンの密猟についてのリポートでナショナル ジオグラフィックが明らかにした通り、2017年6月、中国籍の人物がモザンビークのマプト国際空港で逮捕された。容疑者は象牙製品のほか、ライオンの歯と爪を運んでいた。同年8月にはセネガルで同国史上最大の象牙押収があり、このときライオンの歯も押収された。同年11月、南アフリカ当局はナイジェリア行きの貨物からライオンの歯と爪70点を発見。貨物にはサイの角も含まれていた。

「合法取引は違法取引の一部です。私たちの調査と収集したデータの全てが、このことをはっきり示しています」と、動物福祉団体「EMS基金」代表のミシェル・ピックオーバー氏は強調する。「2つを切り離すことは不可能です」

文=DOUGLAS MAIN/訳=高野夏美

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