【解説】火星の地下に湖を発見、太古の海の痕跡?

火星の「海」の謎を解明する手がかりに

2018.07.27
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 米アリゾナ大学のジャック・ホルト氏は、SHARADのレーダーが使う波長はMARSISのレーダーとは違っているため、湖のある深さまで届かないうちに南極の氷に散乱されてしまうのかもしれないが、液体の湖は電波を反射しやすいのでSHARADでも探知できるはずだと言う。

「塩水は、金属を除けば、おそらく最強のレーダー反射体です」と彼は言う。「湖なら表面は鏡のように滑らかなので、その反射はSHARADで捉えられるはずです。これに対して、水で飽和した堆積物なら、表面がでこぼこしているので、SHARADではとらえにくいでしょう」

 発見者であるMARSISチームを含め、科学者たちは皆、今回の発見を確認したがっている。

「私たちは、それが水である可能性を否定するために全力を尽くしたと自負しています」とペティネッリ氏は言う。「あれだけやって否定できなかったのですから、今では水であることを確信しています。将来、ほかのデータによって裏付けられることを期待しています」

「泥でも湖でも面白い」

 火星の地下に湖があるとすると、この小さな塩水の水たまりは火星の失われた海の謎の解明に役立つ可能性がある。火星の水については、極冠が解けた水は地下に帯水層として蓄えられ、水の大部分は南の高地から北の低地に流れているとする理論がある。米SETI研究所のナタリー・キャブロール氏は、地下の湖は、こうした火星の水文学的循環に関する手がかりにもなると指摘する。

 キャブロール氏は、地球上にある火星によく似た環境も調べていて、アンデスの高地の湖に潜ることもある。彼女は、今回MARSISが発見したものが水で飽和した堆積物であっても本物の湖であっても、非常に面白いと言う。

黒っぽい色をした盆地と白っぽい色をした極冠は、火星のきわだった特徴だ。(PHOTOGRAPH BY NASA, JPL, USGS)
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「いずれにしろ、ここには水と隠れ家があります。そして、鉱物からは栄養分を作り出すことができます」と彼女は言う。「ほかに必要なのはエネルギー源ですが、両極地方に新しい火山があれば、生命が生息できる可能性は高く、生命探査のターゲットになります」

「とはいえ、ここを訪れることには非常に問題があります。火星の両極地方は、惑星を保護するための特別な領域にあたるからです」。国連は、生命が生息している可能性のある惑星間環境の汚染を防ぐために、厳しい規制を行っているからだ。

 地下の湖は、人類が火星への定住を考えるときに、すぐにではないがいつかは利用したい資源でもある。(参考記事:「2024年に人類を火星へ、米スペースXが発表」

『ナショナル ジオグラフィック』の火星シリーズのアドバイザーであり、NASAの以前の首席技術者でもあるブラウン氏は、「最初に火星に降り立った人々が地下何kmにも達するような穴をあけるとは考えられません」と言う 。

「これが本当に湖なら、ほかのもっと表面に近いところにも湖があるでしょう。地下数十mのところに大量の水があることがわかれば、ベースキャンプの建設を計画する頃には、そうした水のことをもっと知りたくなるでしょうね」(参考記事:「火星地図200年の歴史、こんなに進化した15点」

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

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