火星の南極の地下約1.5kmの深さに幅約20kmの湖があるらしいことが明らかになり、7月25日付け学術誌『サイエンス』に論文が発表された。
それだけではない。火星の地下には、ほかにも湖があるようなのだ。「似たような領域がほかにもあります。ここだけと断定する理由は全くありません」と、今回の論文の共著者であるイタリア、ローマ第三大学のエレナ・ペティネッリ氏は言う。
これまで、木星の衛星や土星の衛星には液体の水がたっぷりあることがわかっていたが、火星でまとまった量の水を見つけるのは困難だった。
湖の存在が確定すれば、太古の火星にあった海についての謎の解明につながるだけでなく、将来、人類が火星に移住する際の水源にもなりうる。宇宙生物学者にとっては、湖は地球外生命の理想的な生息地に見えるだろう。(参考記事:「【解説】火星に複雑な有機物を発見、生命の材料か」)
「地球の南極にも同じような環境があり、細菌が生息していることがわかっています」とペティネッリ氏。「彼らは厚い氷の下で生きているのです」
火星は海に覆われていた
数十億年前の火星は、おそらく地球と同じように温暖で、その表面は海に覆われていた。しかし今ではすっかり干上がり、砂漠の惑星になってしまった。かつての火星の海に何が起きたのか、科学者たちは長らく頭を悩ませてきた。
火星ではこれまでに何度か水が発見されているが、大気中に漂っていたり、永久凍土層や極冠に閉じ込められていたり、季節ごとにクレーターの斜面からしみ出していたりと、一時的なものや手の届かないものばかりだった。さらにその量は古代の火星の海を満たせるような量ではなかった。(参考記事:「火星の地下1~2mに氷の層発見、採水に便利」)
米コロラド大学ボルダー校のボビー・ブラウン氏は、「これまでにわかっている水の量では、かつて火星の表面にあった大量の水の行方を説明できないのです」と言う。そこで科学者たちは、行方不明の水の一部が地下の帯水層に閉じ込められているのではないかと考えるようになった。