X線で3Dモデルを作成し、正体を解明
今回の琥珀が発見されたミャンマー北部の産地からは、これまでにも数多く保存状態の良い化石が見つかっている。羽毛恐竜のしっぽのほか、現時点で最古の熱帯雨林のカエル、鳥、太古の吸血ダニも発見されている。(参考記事:「世界初、恐竜のしっぽが琥珀の中に見つかる」)
シン氏によると、彼がこの皮膚の標本を入手したのは2016年初め。中国広東省の潮州市にある徳煦古生物研究所のために、ミャンマー人の化石商から購入した。化石商はこれをワニの皮だと思っていたという。
2つ目の標本がシン氏の目を引いたのは同じ年の夏。初めはムカデかヤスデだと思ったが、上海シンクロトロン放射線施設で高度なX線スキャンを行うと正体が判明した。この施設のおかげで、研究チームは化石内部の解剖学的構造について非常に詳細な3Dモデルを作ることができた。
ヘビは体長約5センチ弱とかなり小さく、肉眼でははっきりとは見づらい。だがX線スキャンを使うと、骨の形や位置を細かく調べることができた。中でも97個の椎骨、つまり背骨には目を見張った。
そのデータに基づくと、この太古のヘビは、白亜紀後期のゴンドワナ超大陸にいたとされるヘビに似ている。このことは、後にミャンマーになる土地が、オーストラリアやアフリカ、インドといった、南にあるほかの大陸から切り離され、今のアジアと衝突したことを示すのかもしれない、とコールドウェル氏は話す。
加えてコールドウェル氏は、この小さな化石には、現生の種にはない特徴がいくつかあると話した。例えば尾椎の下にあるV字の突起がそうだ。突起は、尾に沿った動脈を保護していたとみられ、ヘビが四肢を失い始めたときに安定性を高めるのにも役立っていたかもしれない。
オーストラリア、シドニーにあるニューサウスウェールズ大学の古生物学者、ジョン・スキャンロン氏は、「この化石よりも明らかに古く、適切な保存状態のヘビはどこにもありません」とコメントしている。しかも、かつてローラシア超大陸を構成していた北方の大陸ではトカゲの化石が豊富にあるが、ヘビの化石は少ない。
「同じくらいの年代で、保存状態の良いヘビの化石は、いずれも地中海周辺の海成堆積物から出てきており、水生種だったと考えられています。Xiaophisは陸上の環境にいたのが明らかで、穴を掘って暮らす地上のヘビに似ています」
今回見つかった赤ちゃんヘビには頭骨がない。もしあれば、このヘビの生態やほかのヘビとの関係についてもっと多くの情報が得られただろうとスキャンロン氏は指摘している。しかし、ミャンマーの琥珀からヘビ1匹が見つかったということは、発見され研究されるのを待っているものがまだまだいるはずだ、と彼は付け加えた。(参考記事:「恐竜時代のひな鳥を発見、驚異の保存状態、琥珀中」)
「琥珀だけでなく、モンゴルなど他の土地にもしっかり注意を払っていくことが必要です。そうした場所に、Xiaophisの近縁種が上陸していたかもしれません」