太陽系の果てにあるはずとされる、新たな惑星を探そうとしていた天文学者たちが、意外なものを発見した。木星の新たな衛星だ。しかも12個も。
誤解のないように言うと、これらの衛星は、木星最大にして太陽系最大の衛星であるガニメデとは大きく違う。いずれも直径が1~3キロほどと小さく、不思議な軌道で木星の周りを回っている。(参考記事:「【解説】木星の衛星エウロパに間欠泉、ほぼ確実」)
ほぼ偶然の発見だった。チームが当初調べたのがたまたま木星周辺だったことと、性能の上がった望遠鏡のおかげだ。「素晴らしいことです」と、米カリフォルニア大学バークレー校の惑星科学者、ダグ・ヘミングウェイ氏は言う。「あることを研究する設備が出来上がると、それに伴って予想外の発見があり得るということです」
惑星を追う“パパラッチ”
木星の衛星を新たに見つけるのは、かなり難しい。いまだに私たちの観測の目をすり抜けているということは、とても小さくて不鮮明ということだ。それほどかすかな点を追いかけるには強力な望遠鏡が必要だが、そうした望遠鏡は往々にして視野が狭すぎて、木星系全体を撮影できない。しかも木星は非常に明るいため、小さな衛星はその輝きでかすんでしまうことがある。(参考記事:「木星の芸術的な最新画像、「まるでゴッホの絵」」)
昨年、米カーネギー研究所のスコット・シェパード氏らの研究チームは、冥王星よりも外側を回っていると噂されていた、はるか遠くの惑星を探していた。チリにあるセロ・トロロ汎米天文台の望遠鏡をその星の方向に向け、小さな光が太陽を周回する軌道を通っていないか調べ始めたのだ。
その過程で、シェパード氏らは木星が望遠鏡の観測範囲に入っていることに気付き、せっかくの機会を利用することにした。(参考記事:「木星の南極にサイクロン集団を発見、五角形に並ぶ」)
「使ったのは、数年前に望遠鏡に取り付けられた新しいカメラです」とシェパード氏は話す。「広い領域を探索する速度が大幅に上がったので、木星周辺の全領域をカバーするのに必要な画像は4枚だけでした」
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