5300年前に死んだアイスマン 食料持参で山に

20年かけて胃を見つけ出し残った食料を特定。そこから見えた山に入った理由

2018.07.17
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 腸内の残留物が消化されていて特定が難しい一方、胃の残留物はもろいものの、フリーズドライのような状態だったと、論文著者のフランク・マイクスナー氏は説明する。「本当に、見た目からして興味深いものでした」と話す。同氏は、イタリア、ボルツァーノにあるミイラ・アイスマン研究所の微生物学者だ。

 研究チームは、まず胃の内容物を拡大してのぞき込んだ。「雑食生活だったことは、顕微鏡を見てすぐにわかりました」とマイクスナー氏は言う。サンプルには植物や肉の未消化の繊維の小片が見え、雲のようにぼんやりと見える脂肪に包まれていた。その後、チームはDNA、タンパク質、脂質、代謝産物など多くの検査に取りかかった。

アイスマンが最後に食べたもの

 脂質とタンパク質分析から、エッツィがアイベックス(アルプスに生息するヤギ科の動物)の肉だけでなく脂肪も食べていたことがわかった。胃の内容物が高脂肪だったのは、エネルギーを大量に消費する山歩きを支えるためだったのだろう。「アイベックスの脂肪はひどい味だと思いますよ」と、マイクスナー氏は冗談を言った。

 不思議な点もあった。DNA分析ではアカシカも食事の一部と考えられたが、シカのどの部位を食べたのか、研究者たちは特定できなかった。可能性があるのは、脾臓、肝臓、脳などだ。「この特定はかなり困難です」とマイクスナー氏は言う。

 肉の調理については手がかりが得られた。研究チームは肉の化学的な性質と構造を調べ、生肉や現代の調理済の肉と比較。エッツィの胃の肉は60℃以上に加熱されてはいないと推定した。マイクスナー氏によれば、新鮮な肉はすぐに傷むため、肉は長期間もつように乾燥されていた可能性が高いという。また、炭素の斑点があることから、肉は薫製にされていた可能性もある。

 さらにエッツィはヒトツブコムギと、有毒なワラビ属の植物を食べていたことも判明した。このワラビを大量に摂ると、ウシは貧血を起こし、ヒツジであれば失明を引き起こすことがわかっている。また発がん性も指摘されている。しかし、現在でも、少量であれば、このワラビを食べる人は一部にいる。

【動画】アイスマンの解剖
5300年前に生きていたエッツィが詳しく調べられる様子を、タイムラプス動画で見てみよう。

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