【動画】茶畑でゾウが突進、追い払うのは命がけ

インドの農家にはやっかいな「害獣」、共生への模索続く

2018.07.17
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【動画】インドの茶畑で、大きな牙を持つゾウを追い払おうとした男性。ゾウは男性を追いかけ始め、男性は一目散に逃げた。(解説は英語です)

 インドでは、人とゾウのいさかいは珍しくはない。何千年もの間、共生してきたとはいえ、人がゾウに近づき過ぎるのはやはり危険だ。2018年6月29日にインド南部ムンナル近郊の茶畑で撮影された動画を見ると、そのことを再確認できる。(参考記事:「【動画】近すぎて怖い 野生のヒョウが目の前に」

 映像提供者によれば、ゾウ使いの男性と小さなゾウが茶畑で作業していると、別の大きなゾウが1頭近づいてきたという。この野生のゾウは、過去にも攻撃的な行動をとったことで住民によく知られる存在だという。(参考記事:【動画】インドでゾウの列車事故が多発、対策は?

 動画では、ゾウ使いの友人の男性が、野生のゾウの背後にまわり、声を出して茶畑から追い払おうとしている。すると突然、ゾウが振り返り、男性を追いかけ始めた。幸い、ゾウは途中で足を滑らせて転倒。その間に、男性はゾウから逃げおおせて事なきを得た。

 人とゾウが衝突するときは、たいてい緊張状態にある。今回のように、ゾウも人もけがをしなかったのは幸運だ。インド北東部のある州では、2006〜2016年に、ゾウが800人の命を奪ったというインド政府の統計がある。別の政府の報告では、インドでは平均1日1人が、トラかゾウに殺されているというデータもある。

 人とゾウの接触は、起こるべくして起こっている。インドの世帯の多くが小規模農業を営み、ゾウのほうは森林伐採や開発で生息地を奪われているからだ。

 国際連合食糧農業機関(FAO)の報告には、「インドの非都市部で暮らす世帯の70%が農業で生計を立て、82%が小規模農家で、生活するのがやっとという状況だ」とある。(参考記事:「温暖化で6万人弱が自殺と推算、インド、30年間で」

 アジアゾウの生息地の大部分が、開発や生息地の分断の影響を受けているとの研究結果もある。国際自然保護連合(IUCN)はアジアゾウを絶滅危惧種(Endangered)に指定しており、過去3世代で個体数が50%以上減少している。

 ムルナル近郊の農家は対策としてフェンスをつくったり、夜間に見張りを置き、ゾウが侵入してくると、鍋をたたいて追い払っている。また、ゾウの舌をヒリヒリさせ忌避効果があるトウガラシを、畑の周囲に植える農家もある。(参考記事:群衆に火をつけられ、逃げるゾウの親子

 もちろん、こうした対策は抑止力として完璧ではない。ただ、野生のゾウを傷つけることなく追い払って、農作物の被害も減らしたいというのが農民たちの願いなのだ。

 インドのこの地域には、野生動物を尊重するという文化的、宗教的な伝統が根づいており、多くの農家はあえて非暴力的な方法でゾウを追い払っている。人とゾウの衝突は、今後も続く。人もゾウも暮らしやすい地となる独創的な対策が期待されている。(参考記事:「【動画】赤ちゃんゾウを穴から救出、母の元に」

ゾウと人の付き合い100年の変遷、写真16点(画像クリックでギャラリーへ)
ゾウを使ったショーはサーカスで人気の演目だったが、近年は厳しい目が注がれている。(PHOTOGRAPH BY ATWELL, H. A., NATIONAL GEOGRAPHIC)

文=RICHIE HERTZBERG/訳=米井香織

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