「体内に虫」妄想の難病、10万人に約27人も、米国

とてもリアルな虫の感覚、治療は困難、「寄生虫妄想」で初の集団ベース研究

2018.06.27
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 2012年、デイヴィス氏らは、メイヨー・クリニックが7年間で扱った147件の寄生虫妄想の症例に関する報告を行った。妄想を克服できた患者はひとりも知らないと同氏は言う。患者たちの多くは、これまで知られていなかった珍しい感染症にかかっていると診断されることを期待してクリニックを訪れ、落胆して去っていき、二度と戻っては来ないのだという。

 そのほか、インターネットが患者の増加に寄与している可能性もある。さまざまな寄生虫を扱うブログやウェブサイトがあり、その多くが陰謀説や生物学的にありえない解説を提供することで、症状に悩む人々に共同体意識を与える一方で、妄想を強化して偽の治療法を信じ込ませている。

昆虫学者の元には、この写真のようなサンプルが送られてくる。送り主は、この中に寄生虫がいる証拠が含まれていると考えている。(PHOTOGRAPH BY NANCY C. HINKLE)
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昆虫学者の災難

 リッジ氏もヒンクル氏も、自分のところにやってくる患者に対してはまず、本物の昆虫やダニを探すことから始めるという。何も見つからなかったという検査結果を患者に伝える際には、慎重を期する必要がある。精神科にかかってみては、と言うと、彼らは怒ってしまうからだ。

 リッジ氏は、患者の家族に話をすることでよい結果が得られたことがあると語る。「11人の家族と丸テーブルを囲んで話をしたこともあります」。家族のサポートにより、患者の男性は必要な治療を受けることを決めたそうだ。(参考記事:「抗生物質が効かない「スーパー淋病」英国で感染例」

 ヒンクル氏もリッジ氏も親身な対応をしているが、説得できない人々を説得しようと試みる日々の綱渡りが、彼らの心に負担を強いているのも確かだ。

「ときにはうまく気分転換ができず、眠れないこともあります」とヒンクル氏は言う。

 存在しない虫を何年も探し続けてきた今では、同氏はこう考えているという。「もう笑うしかありません。さもなければ正気を失ってしまいますから」

【動画】人の顔の上で交尾するダニ
米ノースカロライナ州立大学による、人間の顔の上で交尾をする微小なダニの研究。(解説は英語です)

文=Erika Engelhaupt/訳=北村京子

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