トランプ政権が引き離した移民親子、再会できるか

2000人以上の子どもが親と離れて収容、DNA鑑定で関係を特定できる?

2018.06.28
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実際にどうやって検査を実施するのか

 プライバシーの保護以上に難しいのは、実際にどうやって検査を実施するかという問題だと、クリムスキー氏は言う。「途方もなく大変な作業になります。全ての大人と子どものDNAプロファイルを集め、細心の注意を払って比較しなければなりません」

 通常の顧客を後回しにしてこれらのサンプルを全て最優先にしなければ、作業が終わるまでに何週間もかかってしまうだろうと、ヴィラー氏は懸念する。複数の会社が支援を申し出ていることも、状況を複雑にしかねない。会社によって解析する遺伝子の領域が少しずつ異なり、結果に矛盾が生じる恐れがあるためだ。

 これらすべての細かい作業を行うには、膨大な時間を必要とする。だが、離れ離れになった家族には、のんびり待っている余裕はない。ハモッシュ氏は言う。「子どもたちは、1日でも待たせられません。日が経てば経つほど、一生癒えないかもしれない心の傷を抱えてしまいます」(参考記事:「なぜ人は他人を「敵」か「味方」に分類するのか」

そもそも必要な検査なのか

 家族が再会を果たしたとしても、DNA検査が思いもよらない結果を招くことになりかねない。たとえば、育ててくれた親が実の親ではなかったことが判明してしまうケースが出てくることはおそらく避けられないだろうと、ハモッシュ氏は言う。「幼い子どもたちや父親、母親にそんな仕打ちをする理由はどこにもありません」

 クリムスキー氏も、今のこの状況で「本当に必要があるのでしょうか」と疑問視する。ほとんどの子どもたちは親の名前を言えるくらいの年齢で、家族の居場所が正確に記録されてさえいれば再会は実現可能だ。だが一方で、政府の対応は混乱をきたしており、幼児の場合はDNA鑑定だけが唯一の方法となる可能性もある。

 その場合でも、マシューズ氏は「どうしようもなく弱い立場に置かれた無力な人々を保護するために、配慮のあるガイドラインを設ける必要があります」と指摘する。「ここまで弱い立場に追い込まれた人々というのも、他にそうはいないでしょう」(参考記事:「処刑、掃討、性暴力、世界で最も弾圧されている民族ロヒンギャ」

ギャラリー:米国とメキシコ、国境の壁 写真6点(画像クリックでギャラリーページへ)
PHOTOGRAPH BY RICHARD MISRACH

文=Maya Wei-Haas/訳=ルーバー荒井ハンナ

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