史上最古のパンダのDNAを解析、亜熱帯に適応か

中国南部で発見された2万2000年前の化石、かつての多様性示す

2018.06.20
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【動画】パンダを野生に帰す
中国のパンダ繁殖センターの研究者らは、捕獲したパンダに交尾を促し、確実に妊娠させ、生まれた子パンダを生存させる方法を編み出した。

「極めて特別な情報です」

 現代のパンダは、中国中央部の四川、陝西(せんせい)、甘粛(かんしゅく)の3省のみという狭い範囲で暮らしているが、かつては広く分布していたと考えられている。古代のパンダ類の化石はこれまでに、中国、ミャンマー、ベトナム北部から、遠くハンガリーやスペインでも見つかっている。(参考記事:「古代パンダの歯、スペインで発見」

 中国南部の広西チワン族自治区から今回の化石を回収したとき、張氏のチームは、パンダが絶滅した土地で発見したことを大いに喜んだ。ただし、化石は現代のパンダのものによく似ており、またそれが完全な頭骨ではなく、ごく小さな欠片だったことから、それ以上くわしく調べなかった。

 それから1年半の間、化石は北京・中国科学院の張氏の研究室の片隅に、トイレットペーパーにくるまれた状態でプラスチックの箱にしまい込まれていた。

 そのころ、同じく中国科学院の研究員である付氏は、ほかの化石からパンダのDNA抽出を試みていたが、数年間、成果を出せずにいた。中国南部の暑さと湿気のせいで、DNAのらせん構造が破壊されてしまうため、作業は困難を極めていた。

 付氏はその後、新たなパンダの化石の分析に取り掛かったが、一度目の試みは失敗に終わった。「それでも、わたしはもう一度やってみようと粘りました」と付氏は言う。

 研究チームは化石の欠片をCTスキャンにかけ、蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる、カタツムリの殻のような形をした内耳器官の場所を確認しながら分析を進めた。人間の場合、状態のよいDNAが蝸牛に残されていることが多い。この二度目の挑戦で、チームは完全なミトコンドリアゲノムの解析に成功した。

 これは画期的な成果だ。取得できたDNAのデータは「極めて特別な情報です」と付氏は言う。

未来のために

 この研究結果は、4月に学術誌「Genes」にされた、パンダのDNAに関する別の研究内容とも一致する。こちらのDNAは、中国南部で見つかったおよそ5000年前と8500年前のふたつの化石から採取されたものだ。古い方の化石は、約6万2000年前にほかのパンダと隔離したグループだという。

「これらのデータを直接比較するのは、極めて興味深いです」と、米スミソニアン保全生物学研究所・保全遺伝学センターのロバート・フライシャー氏は言う。こうした比較は、化石の正体を確認し、古代のパンダが亜熱帯の気候にどのような適応をしていたのかを探る手がかりとなる。

 付氏はこの先、化石から完全な細胞核のゲノムを抽出することを目指している。そうしたデータからは、はるかに多くのことがわかるからだ。もしかすると、パンダの毛皮は当時から白と黒だったのかといった、見た目の情報もわかるかもしれない。

 付氏のチームはまた、ミトコンドリアDNAの分析も継続して行い、パンダの系統樹を充実させたいとしている。パンダの過去をより詳しく知ることは、パンダの未来を守ることに繋がると付氏は言う。

文=MAYA WEI-HAAS/訳=北村京子

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