研究者が出した暫定的な結論は、真空槽の中の電気ケーブルに地球の磁場が影響を与えたため、推進力が測定されたというものだった。ほかの専門家も、この結論に同意している。(参考記事:「NASAがソーラーセイル探査機、広がる可能性」)
「EMドライブの場合、実験でわずかに確認された推力は、地球の磁場との相互作用によるというのが有力な説です」と、自らも独自の推進装置を開発している米カリフォルニア州立大学フラトン校のジム・ウッドワード氏はコメントした。
地球の磁場の影響を受けずに試験を行うには、ミューメタルという合金で作られた磁気シールドの中にEMドライブを密閉する必要がある。だが、イーグルワークスが行った試験でも、このような磁気シールドは使われていなかった。つまり、イーグルワークスの試験結果が磁場の影響を受けていた可能性を否定できない。
ドレスデン工科大学の報告は、EMドライブの概念自体に冷や水を浴びせるような内容だが、最終的な結論とするにはまだ早いとウッドワード氏は考えている。ミューメタルの磁気シールドは別としても、ドレスデンの試験はかなり低い出力で行われていた。そのため、「本当に推進力が発生していたとしても、ごくわずかで、ほかの雑音にかき消されてしまう可能性もゼロではありません」と、ウッドワード氏は言う。(参考記事:「「スター・トレック」のワープは実現可能か?」)
したがって、もっと出力を上げた試験を行えば、論争に決着をつけてくれるかもしれない。
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