どちらが清潔? 人とチンパンジーのベッド

人工的な環境はどれほど清潔で健康的なのか、最新研究

2018.05.18
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 一方で、米カリフォルニア大学デービス校の進化微生物学者であるジョナサン・アイゼン氏は、「この研究は微生物全体の量ではなく、存在する細菌の種類だけに着目している点には注意が必要です」と指摘する。なお、氏は今回の研究に関与していない。

「どう定義するかにもよるでしょうが、私にとっては、『より汚い』とは『量がより多い』という意味です」とアイゼン氏は言う。

 その上、「確かに不快ですが、自分自身に由来する微生物の中にいても、普通は衛生上問題ありません」とアイゼン氏は続けた。「問題なのは、誰か別の人の体を通ってきた微生物にさらされる場合です」

「ですから衛生の観点からは、多くの他人が使ったベッドで寝るのが最もまずいと言えるでしょう」

屋内環境のせいで健康を損なう可能性も

 アイゼン氏は10年近く前から、「作られた環境の微生物学プログラム」、通称「マイクローブネット(microBEnet)」というプロジェクトに取り組んでいる。人の生活が野外から室内に移ったことが、人間や、その周りの微生物との相互作用にどう影響しているのかを解明しようというものだ。(参考記事:「昔は良かった? 照明がなければ人は長く眠れるのか」

 例えば、今回の研究でリーダーを務めたテメス氏によれば、土壌の細菌にさらされる機会の減少と、自己免疫疾患やアレルギーの発生との関連が、他の研究で見つかっているという。(参考記事:「エイズ流行の起源は1880年代」

「そうした機会を失うことで、私たちの健康や福祉にマイナスの結果が生まれています」とテメス氏。

 従来の研究では、猫の保護施設、水族館、動物園など、動物が暮らしている人工の環境からサンプルを取って細菌を調べていた。だが、人間のベッドとチンパンジーのベッドという、人が作った環境と野生動物が作った環境との比較は、今まで行われていなかった。

 今回の研究結果は、ベッドを実際に使っていたチンパンジーから直接試料を採取するなど、アイゼン氏が必要と考えるデータを全て提供しているわけではない。氏はそれでも、この研究を「信じられないほど画期的」と評価する。(参考記事:「ヒトの脳は加熱調理で進化した?」

「人工的な環境で起こっていることを解きほぐそうとしているのです」とアイゼン氏は語った。

参考ギャラリー:香港にひそむ貧困、1畳間に暮らす人たち 写真22点(写真クリックでギャラリーページへ)
参考ギャラリー:香港にひそむ貧困、1畳間に暮らす人たち 写真22点(写真クリックでギャラリーページへ)
香港コミュニティー組織協会(SoCO)によれば、香港では、推定20万人が不適切な住居に暮らしているという。(PHOTOGRAPH BY BENNY LAM)

文=Jason Bittel/訳=高野夏美

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