「飛ばなかったと自信をもって言えます」

 ブレミール氏によると、今回の発見は、トランシルバニアの白亜紀末の地層から近年見つかった翼竜を全て検討し、太古の生息地について明らかにする大型プロジェクトのなかでもたらされた。

「白亜紀後期には、巨大な翼竜がまとまって現れていたようです。数種の翼竜がおそらく年代的に重なり、いずれも大型化していました」とハビブ氏は話す。「その時の何らかの条件が、彼らにぴったり合っていたのかもしれません」

 地上で狩りをする大きな翼竜が群島の1つに上陸すると、彼らは一帯で最大の捕食者となった。つまり、比較的安全で、獲物にも営巣に適した場所にも困らなかった。

 おそらくこれが、ドラキュラとあだ名された翼竜が驚くほど大型化した理由だろう。このサイズは、空飛ぶ爬虫類としては限界に近い。

ドラキュラと呼ばれる大型翼竜の手首の骨。やはりルーマニアの岩石の中から取り出された。(PHOTOGRAPH BY MATYAS VREMIR)

「ドラキュラ」の論文はまだ発表されていないが、ドイツのアルトミュールタール恐竜博物館には、復元した実物大の骨格標本がすでに展示されている。それによると、地上からの高さは3.5メートル、翼開長は12メートル弱となっている。しかも、肩や翼などの骨の形からすると、この巨大な動物は飛べなかった可能性があるという。

 しかしハビブ氏は、この種が生涯にわたって全く飛ばなかったことにはならないと話す。生まれてしばらくは飛べるか、それに近い行動ができるが、成長して体長も体重も増え、捕食される危険がなくなると、飛ばなくなったのかもしれない。

「『ドラキュラ』は飛ばなかったと自信をもって言えます」とブレミール氏は言う。「よく似た例が、マダガスカル島の絶滅した巨鳥エピオルニスです。トランシルバニアも、白亜紀後期には島でしたから」(参考記事:「エピオルニスの巨大な卵を探して」

 英ロンドン大学クイーンメアリー校の古生物学者、デイビッド・ホーン氏も同意する。氏はルーマニアの大型翼竜は「我々が知る他の翼竜に比べて、もう少し多様で風変わりに見えます」と話す。「島というのは、変わった生き物を生み出すことがよく知られています。ハツェグからは不思議な恐竜がたくさん見つかっていますが、飛び抜けて大きな肉食動物は見当たらないため、翼竜がティラノサウルスのような地位にあったのだと思います」(参考記事:「実は凶器? ティラノサウルスの短すぎる腕に新説」

文=John Pickrell/訳=高野夏美