【動画】鮮やかに追跡!受精後の細胞分裂24時間

1つ1つの細胞を追う新技術で実現した驚異の記録、サイエンス誌

2018.05.10
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 受精卵のように、さまざまな異なる種類の細胞になれる能力をもつものに胚性幹細胞(ES細胞)がある。胚とは、受精後のごく初期の段階をさす。ES細胞の驚くべき潜在能力は、数多くの研究と論争の対象になってきた。いつの日か、これを脳細胞や皮膚、心臓といった思い通りの組織に成長させられるかもしれないと期待される。しかし、細胞がどのように発達するのかを解明しようと、数十年にわたって研究が続けられてきたが、ほとんどが独立して行われ、連携がされていないとメガソン氏は言う。(参考記事:「ゲノム編集でヒト受精卵を修復、米初、将来性は?」

「胚のすべての細胞がたどる完全な道筋を見つけようとしました。まだやらなければならないことはたくさんありますが、これはこの段階の胚についてのはじめての網羅的な地図です」

細胞にDNAのバーコードを導入

 だが、それは簡単な作業ではなかった。単一細胞の遺伝情報がわかるシングルセル解析という技術を使うにあたり、それぞれの細胞を追跡できるように、人工のDNAの“バーコード”を各細胞に導入した。これを数千個の細胞で行ったため、膨大な量のデータを抱えてしまった。

「細胞が自分の運命を選択するプロセスを、谷間を転がるボールに例えてみましょう。谷は、先へ進めば進むほど細かく枝分かれしていきます。しかも、それは2次元の平面ではなく、計算上は2万5000次元に分かれています。どの遺伝子にも、それだけの数があるのです」

 さらに問題を複雑にさせているのは、細胞のなかにも大器晩成型がいるということだ。

「ある細胞は、天才児のようにとても若くして医学部へ進みます。別の細胞は、同じ道を進むのですが、スタートが遅かったり、進み方がゆっくりだったりします」

 細胞が決断に戸惑ったり混乱したりすることがあると以前から考えられていたが、この研究結果はその説を裏付けた。そして、様々な段階の細胞が混在し、最終的に細胞として自分の生きる道を見出す。同じ選択にたどりつくにしても、複数の異なる道筋がある。

 メガソン氏は、この研究が他の科学者への「レシピ本」となることを期待している。胚の中で遺伝子がどのような段階を踏んで、異なる種類の細胞を作り出すのかを示し、「事故や病気で体の一部を失った人間の細胞と交換するために活用されればと願っています」と語った。(参考記事:「テクノロジーで加速する人類の進化」

文=Nick Lunn/訳=ルーバー荒井ハンナ

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