億万長者たちの宇宙開発競争 勝つのは誰?

火星移住に月の居住地化、宇宙旅行を実現しようとする企業家たち

2018.04.12
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リチャード・ブランソン氏は、オーストラリアで行われた系列会社の創立記念パーティで、あるコンテストの開催を発表した。優勝賞品は、ヴァージン・ギャラクティックで行く宇宙への旅だ。(PHOTOGRAPH BY LISA MAREE WILLIAMS, GETTY IMAGES)
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 ジェフ・ベゾス氏の考えは少し違います。彼は「次善策の用意なくして、最善策は成功しない」と考えています。宇宙開発は地球保全のためです。地球上の資源は限りがあります。でも、宇宙には無限とも言える資源が眠っています。

 ただ、本当に宇宙開発は賢い投資先なのかどうかは意見があるでしょう。マスク氏もベゾス氏も宇宙開発に挑む理由は一つだけではないと思います。人類の役に立ちたい、儲けたい、ライバルに先を越されたくないといった気持ちに加えて、ただただ宇宙へ行きたいという冒険心も2人にはあると思います。

もう一人の億万長者リチャード・ブランソン氏は、「ごちゃごちゃ言わず、とにかくやろう」がモットーです。ブランソン氏のヴァージン・ギャラクティック社が目指すものは何でしょう?

 ブランソン氏は、これまでも常識やぶりの冒険に挑戦してきました。世界規模でヴァージンブランドを宣伝するために、気球で太平洋横断に挑みました。このときは予定した南カリフォルニアに着陸できず、カナダの結氷した湖に墜落してしまいました。でも、メーン州から英国までの大西洋横断には成功。このときは、着陸直前にパイロットが脱出してしまったのですが、ブランソン氏が独力で気球を着陸させるという荒業をやってのけました。

 ヴァージン・ギャラクティック社は、母船に宇宙旅客機「スペースシップ2」をのせ、搭乗客を大気圏外の宇宙空間まで送るツアーを計画しています。チケットは25万ドルほどと今は高価ですが、いずれは普通の人も参加できる価格になるでしょう。乗客はシートベルトを外して無重力になった船内を遊泳したり、宇宙から地球の姿を見たりすることができます。(参考記事:「ヴァージン社、“ホワイトナイト2”を公開」

 ただ、この計画は順調ではありませんでした。2014年には、試験飛行中に宇宙船が墜落。パイロットが死亡する事故がありました。それでも、ヴァージン・ギャラクティック社は計画をあきらめず、2018年中に第1回目の宇宙旅行が実施される可能性があります。(参考記事:「墜落事故、宇宙旅行業界に暗雲」

ロケットは、その形から男性の象徴と言われたりします。あなたの本を読んでいると、大富豪の男たちが学校で「俺のほうがでかいぞ!」と自慢し合うのと同レベルではないかという気がしてなりません。

 カギは競争だと思います。アポロ計画時代は、ソ連との競争があったからこそ、米国は月面着陸という偉業を達成できました。もちろん、当時のNASAには潤沢な資金がありましたが、結局は軍の付属機関です。過去の宇宙開発競争は「軍事プログラム」だったのです。技術の進歩で、今では宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに行くことは珍しいことではありません。ただ、宇宙ステーションは地上からわずか400キロしか離れていません。38万キロ離れた月に行くほど野心的な話ではないのです。

 3人の億万長者の取り組みは、宇宙産業に再び競争の芽を植え、新たな宇宙開発レースを生みました。訴訟やツイッターでのなじり合いなど、ライバル間で緊張が高まることもあります。しかし、結局はお互いが必要であり、3人とも競争は良いことだとわかっていると思います。こうした競争が効率的な開発、安全性の向上、革新性を支える土台となっています。

 民間でロケットを作ってしまうのは、やはりすごいことです。3人とも、自負心と野心を持っています。大きな挑戦ですが、失敗の確率も高いだけに、資金があるかだけでなく、度胸と勇気も必要です。

次ページ:3人の中で、勝つのは誰?

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