論文に掲載されたいて座A*の実際の画像。(PHOTOGRAPH BY NATURE AND HAILEY, ET. AL)
[画像をタップでギャラリー表示]

 天文学者たちは、銀河系内に散在するブラックホールより、中心の巨大ブラックホールの周りに群がるブラックホールの方が、数が多いのではないかと考えている。今回の発見に基づき、研究者たちは、銀河系にブラックホール連星が約500あり、ブラックホールは合計約1万個あると見積もっている。(参考記事:「新発見! 銀河系の外に、1兆個の惑星が存在か」

 彼らは、降着円盤をもつブラックホールで、かつ観測できるものは全体のごく一部であると仮定して、この結論に至った。

「あなたがサッカー場にいて、100ワットの電球と10ワットの電球が周囲にたくさん置いてあると想像してみてください」とヘイリー氏は言う。この電球を、1マイル(約1.6km)離れたところにばらばらに置いてもらう。「100ワットの方はまだ見えるでしょうが、10ワットの方は見えないでしょう。けれども、100ワットの電球と10ワットの電球の比率が分かっていれば、1マイル離れた100ワットの電球の光を見て、その周囲に10ワットの電球が何個あるかがわかります」

 今回の研究は、ブラックホールの20個に1個が連星になっているとする理論に基づいている。しかしヘイリー氏は、たとえこの理論が完璧なものでなくても、銀河系には、これまでに見つかっている60個よりはるかに多くのブラックホールがあるだろうと考えている。(参考記事:「【解説】ダークマターない銀河を発見、なぜ重要?」

「理論が間違っていて、ブラックホール連星の割合が2桁も3桁も違っていたとしても問題ありません。ブラックホールが1000個あるなら、1個もないよりはるかにすばらしいことだと思います」

重力波研究の実験室に

 銀河系の中心には地球から最も近い超大質量ブラックホールがあり、その周囲は密集する天体間の相互作用を知るのに理想的な実験室になっている。

 ヘイリー氏は、今回の発見は重力波の研究にも関わってくると指摘する。重力波は、巨大な天体どうしの衝突といった激しい天体現象に伴って生じる時空のさざ波だ。ブラックホールの個数が明らかになれば、ブラックホールから来た重力波がどれで、どのような過程で発生したかを推定するのに役立つだろう。(参考記事:「重力波検出に成功、30億年前のブラックホール衝突」

「天体物理学者が必要とするものはすべて銀河系の中心にあるのです」とヘイリー氏は言う。

【参考ギャラリー】ブラックホールの謎に迫る宇宙の画像 6点(画像クリックでギャラリーページへ)
巨大な渦
NASAの望遠鏡が撮影した遠方の銀河では、中心のブラックホールのまわりを星々が環のように取り囲んでいる。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH)

おすすめ関連書籍

宇宙48の謎

地球外生命体を探せ!

『ナショナル ジオグラフィック別冊』シリーズの第5弾。最新の宇宙像、宇宙理論を、イラストや写真をふんだんに使い、わかりやすく解説した科学入門書。

定価:本体1,400円+税

文=Sarah Gibbens/訳=三枝小夜子