抗生物質が効かない「スーパー淋病」英国で感染例

淋病が不治の病に? 抗生物質の乱用で高まるリスク

2018.04.03
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抗生物質が効かなくなっている

 淋菌(Neisseria gonorrhoeae)という細菌の感染により引き起こされる淋病は、性的な接触によって広まる性感染症だ。出産時に母子感染することもあり、その場合は目が侵されることが多い。

 感染者のほとんどは症状がないが、症状がある場合は、排尿時の痛み、性器からの異常な分泌物、性器周辺の痛みなどが見られる。治療せずに放置すると、不妊症や骨盤腹膜炎になることがある。治癒後に再感染することもある。

 CDCの推定によると、米国では毎年約82万人が淋病に感染していて、そのうちの半数以上が報告されている。多くの患者は明らかな症状がないため診断を受けていないが、淋病の治療は以前より困難になっている。昔からある安価な抗生物質は、誤用され、過剰に使用されてきたせいで、今では効かなくなっている。最も一般的な性感染症である淋病、クラミジア感染症、梅毒のうち、抗生物質耐性が最も強まっているのは淋病である。(参考記事:「サメの体内に抗生物質の耐性菌が増殖」

スーパー細菌との戦い

 淋菌は、抗生物質が効かない「スーパー細菌」になりつつあるのではないかと懸念されている。米国では毎年200万人が抗生物質耐性菌に感染していて、そのうちの2万3000人が死亡している。タフツ医療センターの適応遺伝学・薬剤耐性センター所長であるスチュアート・レヴィ氏は2014年に、「抗生物質の使い方は改善していません。抗生物質はウイルスではなく細菌と戦うためのものです。必要のないときに抗生物質を用いるたび、抗生物質への耐性を高めてしまっているのです」とナショナル ジオグラフィック誌に語っている。(参考記事:「薬剤耐性菌の感染拡大、世界で脅威に」

 レヴィ氏は「細菌は自分の身を守るために、抗生物質を破壊する能力を獲得しました」と話す。「さらなる変異によって、細菌は抗生物質を不活化する酵素を作れるようになるかもしれません。あるいは、抗生物質が攻撃しようとする標的を排除してしまうかもしれません」(参考記事:「原始の洞窟で薬剤耐性菌を発見」

 世界保健機関(WHO)前事務局長のマーガレット・チェン氏が2016年に国連の演説で用いた「私たちに残された時間は尽きようとしています」という言葉は、核心をついていると言えるだろう。(参考記事:「小さな細菌の世界」

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