スズメはなぜ町の中でしか子育てしないのか?

身近な鳥の「身近さ」の秘密

2018.04.02
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特集フォトギャラリー5点(画像クリックでリンクします)
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雪原に降り立ったスズメ。すっくと立ち、前を見据える。開けた場所では、タカなどの天敵が近くにいないか、常に気を配る。写真=熊谷勝

 鳥、と言われれば、ハト、カラスと並んで、やはりスズメを思い浮かべるのではないだろうか。

 スズメを思い浮かべるのは、スズメが身近な鳥だからである。この「身近にいる」ということをもう少し掘り下げて考えてみたい。

 日本では、700種ほどの鳥が記録されている。このうち、ほとんどの鳥は、山や草原などの自然豊かな環境にいる。町の中にいるのは、スズメをはじめとした10~20種ほどである。さらに、それらのうちのほとんどは「町の中でも」見られる鳥である。

 たとえば、シジュウカラの本来の住処は森林だが、町の中の小さな公園にも生息している。対して、スズメは「町の中でしか」子育てをしない鳥である。なぜスズメが町なかを選択しているのかといえば、天敵であるタカやヘビが人を恐れて近づかないことに加えて、今から述べるように巣を作りやすいからだと思われる。

 さて、そのスズメの巣だが、多くの方は見たことがないだろう。カラスの巣であれば、冬に葉がごっそり落ちた街路樹の中に見つけることもあるかもしれない。しかし、スズメは例外はあるにせよ、木に巣を作らない。では、どこにあるかといえば、屋根瓦の隙間、屋根と壁の隙間、道路標識のポールに空いた穴などの人工構造物の隙間である。そのため、巣そのものは見えないが、それらの隙間に餌をもって入っていく親鳥の姿やその隙間から聞こえる雛の声で、巣があるとわかる。巣は思ったより多く、100メートル四方に数個はある。

スズメは減っている

 身近で文化の中にも登場するスズメだが、現在減少していると考えられている。スズメの正確な個体数調査が行われているわけではないが、さまざまな記録から、1990年ごろから減少しており、半減したと考えられる。それ以前は十分な記録がないのでわからないだけで、減少幅はもっと大きいかもしれない。

 減った原因の一つは、巣を作れる場所が減ったからである。昔の建物は屋根瓦や、軒下に手ごろな隙間があり、スズメが巣を作っていた。しかし、近年建てられた住宅は気密性が高く、このような隙間がなく巣を作りづらい。さらに、スズメが餌を採る場所も減っている。昔はよくあった、草が生えたような駐車場や空き地は舗装されてしまっている。

 このまま減少が続いて、いつかスズメを見なくなる日がくるかというと、そう単純ではないと思われる。というのも、現代のスズメが巣を作っている人工構造物の隙間の中には、たとえば道路標識のように、過去には存在しなかったものも多い。今後も、スズメは人間の作り出した文明にうまく対応してくれるかもしれない。一方で、ヒバリやゲンゴロウのように昔は当たり前にいた種が、消えていった例もある。油断は禁物である。

※ナショナル ジオグラフィック4月号「はじめてのスズメ」では、身近な野鳥のあまり知らない素顔を、美しい写真と専門家の解説で紹介します。

文=三上 修 鳥類学者

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