クロウリー氏は、体の大きさと襟毛(ラフ)と呼ばれる顔の毛皮から、樹上にいた2匹は両方ともオスである可能性が高いと考えている。そして、確証はないものの、動画には登場しない3匹目のオオヤマネコはおそらくメスではないかという。
「相手に向けている敵意を見るかぎり、近くにメスがいるとしか思えません」
メスのオオヤマネコは、1年に1匹のオスとだけ繁殖行動を行うと考えられている。体が大きく優勢なほうのオスが、繁殖の機会を守るために、もう1匹のオスを木の上まで追いかけていった――これがクロウリー氏の見解だ。
オオヤマネコが発する不気味な鳴き声は、今回のような戦いの最中にあげる「ときの声」ばかりではない。繁殖の季節になると、オスは低く短い声を繰り返しあげながらメスを追いかけるという。(参考記事:「動物たちはなぜ奇妙な贈り物をするのか」)
怖いのは声だけ
動画では激しい対決シーンを見せているものの、オスのカナダオオヤマネコは大人でも体重18キロを超えることはほとんどない。そのため、ウィーブ氏に危険が及ぶことはないはずだとクロウリー氏は語る。(参考記事:「【動画】衝撃、チンパンジーが元ボスを殺し共食い」)
「もし人間がオオヤマネコの巣穴で子ネコを見つけたら、通常、メスは逃げ出してしまいます」とクロウリー氏は話す。オオヤマネコは人間にとって脅威ではないが、このめったに見ることができない動物をはじめとして、野生動物とは健全な距離を保つことが重要だ。
それでもウィーブ氏は、腰のあたりまで積もった雪の中に立っているとき不安を感じたという。鳴き声に引き寄せられてピューマがやってきた場合に備えて、クマ避けのスプレーを取り出したほどだ。(参考記事:「【動画】毒ヘビの異種がメス争い、野生で交雑?」)
この身の毛もよだつような鳴き声を聞けば、不安にもなるだろう。クロウリー氏も、「確かに、森の中でこの声を聞くのは不気味なことです」と話している。
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