【参考ギャラリー】曖昧になる男女の境界 写真11点(画像クリックでギャラリーページへ)
双子のケイレブとエミー。生まれたときはそっくりだったが、エミー(右)は12歳の時に男性であることに違和感を抱き、その後、性別適合手術を受けた。(Photograph by Lynn Johnson)

各地で医療者の教育はじまる

 米国のレズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・クィア(LGBTQ)を対象に行った最近のアンケート調査では、20%の回答者が、医療機関で差別を受けたことがあると答えた。ほかにも非営利団体「ラムダ・リーガル」によるアンケートで、70%のトランスジェンダーと性同一性障害者が、やはり医療の場で深刻な差別を受けたことがあると回答している。(参考記事:「地図で見るLGBT違法の国、合法の国」

 さらに、2015年の米国トランスジェンダー調査では、過去1年間で医療機関を受診した回答者の33%が、少なくとも1回は不快な経験をしていると答えた。その内容は、治療を断られたり、口頭でハラスメントを受けたり、肉体的・性的暴行を受けたり、トランスジェンダーへの適切な処置について医療スタッフに説明しなければならなかったなど。そしてこの確率は、有色人種や障害を持つトランスジェンダーになるとさらに高くなる。

 こうした状況に対応するため、全米各地の医療機関で、トランスジェンダーの医療に関する訓練を行う動きが出てきている。

 ケンタッキー州のルイビル大学医学部は、2015年にイークオリティ・プロジェクトというプログラムを立ち上げた。医学部の1~2年生を対象にLGBTQ医療の手引書などを使って、トランスジェンダーや性同一性障害者の直面しがちな医療問題を学ぶ。

 オハイオ州のケース・ウェスタン・リザーブ大学では、学生はLGBTQ患者のケアに関する講義を4時間受けることが必須とされ、トランスジェンダー用語、医療を施す上で障害となるもの、個人的な偏見を取り除くことなどを学んでいる。

 ニューヨーク大学ランゴーン医療センターでは、訓練を受けたトランスジェンダーの俳優が患者役となり、学生を指導している。実際のトランスジェンダーが患者を演じることで、訓練に現実性を持たせることができると、同センターのリチャード・グリーン氏は説明する。

 グリーン氏の取り組みに興味を持ち、患者役を演じたケイト・テレルさんは、ニューヨーク州北部に住む54歳のトランスジェンダー活動家だ。1980年代後半にトランスジェンダーであることを公にカミングアウトしたテレルさんだが、10~20年前と比較すると医療ケアははるかに良くなったと話す。(参考記事:「ジェンダー革命 男と女で何が違う? 9歳の視点」

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