トランスジェンダー「救急外来で嫌な思い」、調査

「見世物になった」と感じる患者も、米国で対策始まる

2018.03.29
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 それでも、まだ改善の余地はある。言葉による差別や治療拒否、院内で体を触られるなどの経験を持ち、同じような目にあう人をこれ以上増やさないために、自ら教育の改善に関わって行こうと決めた。

「胸に痛みがあっても、まずはその場に座って考えてしまいます。嫌な思いをしてまで病院へ行くほどの痛みなのかどうかと」。テレルさんは現在、ニューヨーク大学の教材を使ってコロンビア・バセット医科大学学位プログラムの訓練プログラムを共同作成している。(参考記事:「ナショナル ジオグラフィック誌が「ジェンダー革命」特集で全米雑誌賞」

人を人として扱って

 トランスジェンダーの人々が自ら行動を起こすケースもある。トランスジェンダーの患者を受け入れ、理解し、専門の訓練を受けた医師を、自分が住んでいる地域で探せるように、医療専門家の情報をデータベース化し、検索できるサービスも立ち上がった。

 2000年にカミングアウトしたサミュエル・ホートン・マーティンさんも、やはり医療の現場での辛い経験を持つが、今はとても素晴らしいかかりつけ医に出会うことができたと話す。(参考記事:「ナショジオは人種差別的だった、米版編集長が声明」

「トランスジェンダーをよく理解し、敬意を持って接してくれる医師です。ジェンダーに関する私の自己意識を尊重し、適切な人称代名詞を使ってくれます。また、トランスジェンダーの治療に伴う複雑さも理解しています」

 改善は見られるものの、教育はまだ十分に普及していない。患者に接する際に配慮すべき点を学ぶ機会は、現役の医学生だけでなく、そのような教育を受けてこなかったベテランの医師にも与えられるべきだと、ホートン・マーティンさんは付け加えた。

「だいぶ教育が行われるようにはなりましたが、それでも医師が患者を尊重していながら好奇の目をぬぐえないという状況は多々あります」

 TIGRISコンサルタントのマーサー氏も、医学教育の初期段階よりも先へ対話を進めるべきだと考えている。

「もしあなた自身にトランスジェンダーの経験がないなら、理解するのは難しいでしょう。最終目的は、そこではありません。最終目的は、自分が決して理解できないことのためにいかにして場所を開けられるかです」

 そして、トランスジェンダーの患者が真に受け入れられ、十分な治療を受けられるようにするには、医師だけでなく全ての医療従事者が基本的な教育と訓練を受けるべきだと、論文の筆頭著者でエール大学博士研究員のエリザベス・サミュエルズ氏は言う。

「トランスジェンダーの人とどう話すか、どう質問するか、希望する人称代名詞についてどう尋ねるか、といったことは、全ての人が知っておく必要があります。患者のジェンダーを尊重し、受け入れる環境づくりのために必要な、良質で患者中心のケアの基本です」

 医師には、少なくともトランスジェンダーの患者に対して普通に接してほしいとテレルさんは話す。医師にとって最も学ぶべきこと、心に留めておくべきことは、「人を人として扱う」ことだという。(参考記事:「アルビノ 白い肌に生まれて」

文=Susmita Baral/訳=ルーバー荒井ハンナ

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