「うまくいったとしても、手首の動きのような、関節1つか2つ分の簡単な動きだろうと思っていました。ところが蓋を開けてみると、複数の指が連動した、手全体の複雑な動きを感じていたのです。被験者はそれぞれの指がどこを向き、何をしているのかをわかっていて、面白い形に手を握っていると感じていました。本当に驚きました」。マラスコ氏はギズモードのインタビューに対しこのように語った。(参考記事:「テクノロジーで加速する人類の進化」)
その後、3人の被験者が参加した別の実験で、マラスコ氏らは、錯覚として感じるこれらの運動感覚を、義肢の動きに応じて与えることにも成功した。失われた腕の神経が命令を発すると、接続部の皮膚と筋肉に取り付けたセンサーがそれを検出する。研究者たちはさらに、ロボット義手の動きに連動して、接続部の皮膚と筋肉を特定のパターンで振動させるモジュールを製作できた。
すると、3人の被験者はものの数分でロボット義手をうまく制御できるようになり、ロボット義手を自分の手のように感じる気持ちが大きくなったと報告した。(参考記事:「脳の信号だけでロボットを操作、米でサルを使った実験成功」)
研究チームは、被験者に触覚なども経験させるにはさらなる研究が必要だと言っている。また、もっと多くの患者について、今回の結果を検証する必要がある。
マラスコ氏は、「私たちの研究の最終的な目標は、動きの感覚を利用して患者と義肢との関係を効率化し、義肢を患者の自然な一部とすることにあります」と語る。