2018年1月末に米アラバマ州アラバスターに住むチャーリー・スティーブンソンさんが、自宅の裏庭を眺めていると、奇妙なものが目に留まった。見たこともない黄色い鳥が、野鳥用に吊るした餌箱で餌をついばんでいたのだ。(参考記事:「【動画】金魚にエサをやる鳥、理由は?」)
スティーブンソンさんはベテランのバードウオッチャーで、ショウジョウコウカンチョウ(猩々紅冠鳥、「猩々」は赤い毛をもつ架空の動物。英名のカージナルにも赤いという意味がある)は何十回となく見たことがある。だが、黄色いショウジョウコウカンチョウとなると話は別だ。そこで、スティーブンソンさんはiPhoneで写真を撮り、フェイスブックに投稿した。
スティーブンソンさんは、アルビノ(先天性白皮症)と白変種の鳥なら過去に見たことがあると地元のニュースサイトAL.comに話している。アルビノはメラニン色素が欠乏した個体で、白変種はそれとは別の理由により体の色が白っぽくなる突然変異だ。(参考記事:「黄色いキツツキが赤くなった原因を解明」)
だが、今回の黄色い珍客は、そのどちらでもない。このオスのショウジョウコウカンチョウは、極めて珍しい突然変異を起こしたために、普通なら赤いはずの羽が黄色くなった、と米アラバマ州オーバーン大学の鳥を専門とする学芸員のジェフリー・ヒル氏は説明する。(参考記事:「【動画】極めて珍しい白いオランウータンを保護」)
ヒル氏はショウジョウコウカンチョウを40年間観察してきたが、今回のように野生の黄色い個体は一度も見たことがないという。
人を呼ぶ黄色い鳥
スティーブンソンさんが写真を投稿すると、彼女の友人でプロの写真家であるジェレミー・ブラック氏も黄色い鳥を撮りに訪れた。
「あの時は、まさか本当にそんな鳥が存在するとは考えていませんでした」と、ブラック氏は言う。「写真をちょっと加工したんだろうぐらいに思っていました」(参考記事:「なぜ人は嘘をつく?」)
2月17日、ブラック氏はカメラと双眼鏡を手に5時間ものあいだ、スティーブンソンさんの裏庭をくまなく見張っていたが、目にするのは赤いショウジョウコウカンチョウばかり。とうとうサンルームへ引き上げることにした。
それから数時間後、幻の鳥が隣の庭に降り立った。
「鳥がとまっているのを見た途端に、魅了されました」と、ブラック氏はいう。「思わず息をのみましたよ」
ブラック氏は撮影し始めたが、2、3枚しか撮らないうちにリスが出てきたので、驚いた鳥は、素早く飛び立ってしまう。それからというものブラック氏はより多くの写真を撮ろうとこの庭に日参し、かれこれ1週間近く通い詰めている。