洞窟壁画を描いたのは誰なのか?
ヨーロッパの初期の洞窟壁画は、ネアンデルタール人と初期のホモ・サピエンスが共存していた時代のものであるため、どちらが描いたのか判断するのは難しい。(解説は英語です)

ホモ・サピエンスだった?

 研究チームは、同じ才能をもつネアンデルタール人とホモ・サピエンスについて、本当に別々の種なのだろうか、もしかすると、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスのヨーロッパの孤立した亜種なのかではないかとさえ考えるようになった。(参考記事:「ネアンデルタール人のゲノム解読、我々の病に影響」

「ネアンデルタール人とホモ・サピエンスは認知能力の点では見分けがつきませんでした。ならば、両者を分けて論じることはできません」とシルホン氏は言う。「ネアンデルタール人もホモ・サピエンスだったのです」

 しかし、ほかの専門家は、もっと慎重にならなければいけないと警告する。米カリフォルニア大学バークレー校の名誉教授で、先史時代の洞窟アートの権威であるマーガレット・コンキー氏は、古代の芸術作品を定義するのは難しく、古代の芸術家がどれほど洗練されていたかを評価するのはさらに難しいと指摘する。彼女は、議論をより説得力あるものにするためには、年代測定や洞窟壁画をネアンデルタール人の存在と明確に結びつける研究が必要だと考えている。スペインのほかの洞窟ではネアンデルタール人の骨が見つかっているのだから、研究は不可能ではないはずだ。(参考記事:「4代前にネアンデルタール人の親、初期人類で判明」

「年代が一致するというだけで、そこにネアンデルタール人がいたと断定できるものでしょうか?」と彼女は言う。「私も、ネアンデルタール人が黄土や炭を使って印や絵を描くことができたとする点には異論はありません。けれども、複数の証拠から一つの事実を明らかにするというのが、ふつうの考古学の進め方だと思います」

 一方パイク氏は、将来の考古学研究に使えそうな手法の多さに心を躍らせている。「私たちは氷山の一角に手をつけたにすぎません。仕事は山ほどあります」(参考記事:「人種の違いは、遺伝学的には大した差ではない」

おすすめ関連書籍

今の科学でここまでわかった 世界の謎99

古代文明から超常現象、宇宙、生命まで、ミステリーの全カタログ。好奇心をかき立てる『世界の謎』99個を集め、科学の眼で迫ります。

定価:本体1,400円+税

文=Michael Greshko/訳=三枝小夜子