2700年前の封印を発見、預言者イザヤのものか?

聖書以外でイザヤへの言及が見つかった初の例となるか

2018.02.26
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粘土に押されたヒゼキヤ王を記す印。「イザヤ」の名がある封印と同じ発掘場所で見つかり、出土地点は3メートルしか離れていなかった。(PHOTOGRAPH BY OURIA TADMOR/EILAT MAZAR)
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裏付けに課題

 この解釈は魅力的かもしれないが、封印が示す人物の特定には「大きな障害」があるとマザール氏は認めている。特に、「nvy」という文字がそうだ。最後に「アレフ」がなければ、「nvy」は単なる人名(多くの場合、当人の父親)か地名(その人の出身地)となる。

 米ジョージ・ワシントン大学の教授で、セム系諸語に詳しいクリストファー・ロールストン氏も、「nvy」の読み方が問題だと話す。

「2つ目の単語が肩書きの『預言者』だと確定するのに必要な、極めて重要な文字が『アレフ』です。しかし、この封印で『アレフ』は判読できないため、提示された読み方には裏付けが全く得られません」

「nvy」の解釈を厄介にしているのが、定冠詞「ハー」の欠落だとロールストン氏は指摘する。聖書の記述の大部分において「預言者」は無冠詞ではなく、英語のtheに当たる定冠詞が付いている。「つまり、これが『預言者』という単語であるならば、『預言者イザヤ』(Isaiah the prophet)にあるような『the』はないのだろうか、と私なら考えます」

 マザール氏は、定冠詞がないことも封印の解釈を難しくしている一因だと認める一方、定冠詞は本当は「nvy」の上の欠損部分にあったのかもしれないし、他の考古学や文献の例から、単に省略されたのかもしれないとの可能性を示している。

封印の欠けた部分には、もともと何が書かれていたのか。研究者らは、ヘブライ文字の「バブ」と「ハー」が中段に、「アレフ」が下段にあった可能性を指摘する(図に青い字で復元)。その場合、完全な封印は「預言者イザヤのもの」と読める。(ILLUSTRATION BY OURIA TADMOR/ EILAT MAZAR)
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 ロールストン氏はまた、ヘブライ語の語幹「yš‘」は預言者イザヤだけでなく、聖書に出てくる20近い人物の名前に当てはまると話す。「当時、イザヤという名前の人物は何人もいましたし、語幹が全く同じ名前の人もたくさんいました」とのことだ。また、「nvy」が実は誰かの父の名の一部だとすると、預言者イザヤとは無関係であることが確実になる。聖書によれば、イザヤの父の名はアモツだからだ。

 聖書で描かれる預言者イザヤは、北のイスラエル王国がアッシリアに征服され、南のユダ王国もその脅威にさらされる激動の時代に、ヒゼキヤ王に助言を与えた。ヒゼキヤ王とイザヤの両方に関わるとみられる遺物の発見について、マザール氏は「エルサレムの歴史上特殊なこの時代について明らかにできる貴重な機会だ」と結んでいる。(参考記事:「古代イスラエル、ソロモン王の銅山の証拠発見か」

「もちろん、これが預言者イザヤの印だという推定には心ひかれます。しかし、それは決して確実なものではないのです」と、ロールストン氏は注意を促した。「何も明言はできません」

文=Kristin Romey/訳=高野夏美

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