研究結果に対する疑問も

 だが、この研究結果が一般化できると考える研究者ばかりではない。例えば、無害な微生物が隣の惑星にいると認めることと、技術を持つ高度な宇宙人に直面することの間にはかなりの隔たりがあると指摘する専門家は多く、バコッチュ氏もその1人だ。1つのシナリオを別のことに当てはめるのは、必ずしも正確ではないだろう。

 また著者らは、火星の隕石に関する記事を使って人々の反応を調べた。だが微生物であろうとなかろうと、生きた地球外生命への反応は、化石に対する場合と大きく異なるはずだ。

 カナダ、ヨーク大学の人類学者キャスリン・デニング氏は、「メカニカル・ターク」ユーザーの偏りを指摘する。論文にある通り、彼らの大半は白人で、大学教育を受けた米国人だ。人類全体の代表とは程遠い。

「かなり限定されたサンプルから人類全体の反応にまで一般化する過程には飛躍があり、実に問題です」とデニング氏は懸念する。「この研究のもう1つの制約は、米国人の回答者は、これらの発見を米国の機関が出した情報だとおそらく想定していたことです。回答者が複数の国にまたがるなら、もっと複雑な結果になることは容易に想像がつきます」

(バーナム氏ら論文の著者もこの点は認識しており、異文化間で同様の調査をしたいと話している。バコッチュ氏によれば、そうした研究はないわけではなく、地球外生命と初めて遭遇する状況に対する米国人と中国人の態度の違いを調べた成果があるという。)

 デニング氏の懸念は他にもある。ニュース記事で使われた単語を「肯定的」か「否定的」かに単純に分類した結果から、何らかの複雑なものを推定しているという点だ。

「私としては、本当に興味をそそる点は全体の平均にではなく、微妙なニュアンスの中にあるのだと思っています」

 そして地球外生命が発見された場合、ニュースの世論への影響は、一個人が単にニュースを読んで感想を書きつけるよりずっと複雑になる。会話、ソーシャルメディア、相反する報道などが「大変重要です」とデニング氏は言う。「ここから分かるのは、発見後の問題についてのさらなる研究の必要性です。つまり、『ニュースがどう動くか』という細かい変化を掘り下げた研究ですが、調べるのは難しいでしょう」 (参考記事:「【解説】宇宙生命探査、次はこうなる」

 こうした疑問に対するアプローチの一助として、バコッチュ氏は神学者テッド・ピータース氏の成果を挙げている。地球外生命の発見が、宗教的信念にどう影響するかを探ったものだ。その研究では、自身の宗教的信念に確信がある人ほど、宇宙人の存在を認めることができると示された。つまりバコッチュ氏いわく、宗教のように異論が多く、科学と相いれないように見えるものでさえも、宇宙人の襲撃で揺らぎはしないということだ。

「影響の大きな科学的発見であっても、人々は自分の世界観を壊すことなく受け入れられるのでしょう」と、バコッチュ氏は話す。

 それが本当なら、今回の研究が出した結論は、結局それほど大きな影響はないのかもしれない。

文=Nadia Drake/訳=高野夏美