アルツハイマー病、治療の道筋を示す研究成果

原因とされる「老人斑」を消滅させることにマウスで成功

2018.02.22
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 認知テストにおいては、脳から斑が減っていくにつれて、マウスの学習と記憶が改善していることが示された。ただしそのレベルは、アルツハイマー病にかかっておらず、かつBACE1が機能しているマウスと同程度まで回復することはなかった。(参考記事:「アンチエイジングの秘密に迫る新研究」

「我々の知るかぎり、マウスを使ったアルツハイマー病の研究において、これほど劇的なアミロイド沈着の反転が見られたのは初めてです」。BACE1の発見者の一人で、論文の共著者であるリチャン・ヤン氏はそう述べている。

道のりはまだ長い

 今回の成果はすばらしいものだが、それがどんな意味を持つのかという点は、正しく理解しておく必要がある。(参考記事:「解説:サルのクローン誕生、その意義と疑問点」

 まず、今回の研究の対象は人間ではなくマウスであること。また、この実験は薬がBACE1にどのように働きかけるかを模擬的に試してみたものであり、薬剤そのものを使った実験ではないことだ。

 さらに、今回の研究に使われたマウスは最も高齢のものでわずか10カ月と、人間に置き換えると中年にあたる程度だ。より高齢のマウスであれば、おそらくこれほどの治療効果は見られないだろう。高齢のマウスを使った実験が必要であることは、論文中にも記されている。

 それでも、BACE1阻害薬の開発を目指す薬剤開発者にとって、今回の発見は歓迎すべきニュースとなるだろう。BACE1阻害薬の中には、すでに臨床試験にかけられているものもあるが、最近はかんばしい成果を得られていない。(参考記事:「オピオイド依存に悩む米国、貝の毒で新薬開発へ」

 たとえば米の製薬会社メルクが開発しているBACE1阻害薬「ベルベセスタット」の場合、初期の臨床試験では有望な結果が得られていたものの、リスクを上回る効果を期待できないとして、軽度のアルツハイマー病患者を対象とした臨床試験の中止が2月13日に発表されている。

 一般に新薬の開発には長い年月がかかる。米研究製薬工業協会は、特定の薬剤の開発には少なくとも10年かかるとしている。2016年に学術誌『Journal of Health Economics』に掲載された論文によると、新薬の研究開発には平均26億ドルのコストがかかるという。(参考記事:「ゴキブリをゾンビ化する寄生バチの毒を特定」

文=Michael Greshko/訳=北村京子

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