蚊をうまくよけるためのアドバイス

 ネッタイシマカは、黄熱病、デング熱、チクングニア熱、ジカ熱など、数種類の人間の重大な病気を媒介することが知られている。ドーパミンが関与する学習能力の発見により、殺虫剤や防虫剤を開発する研究の新たな道が開かれた。(参考記事:「【解説】ジカ熱に未知の経路で感染、米国」

蚊が、叩くのに似た振動を加えた後で匂いにどう反応するかを、科学者は実験室で確かめた。(Photograph Courtesy of Kiley Riffell)
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「記憶は重要ですが、蚊の研究ではまったく考慮されていませんでした」と、米カリフォルニア大学デービス校の化学生態学者ウォルター・リール氏は言う。同氏も人間と蚊との相互的な影響を研究している。

「特定の匂いが嫌な記憶を呼び起こすことがわかった今、ディートのような有効な忌避成分だけでなく、嫌な記憶を呼び起こす匂い化合物も含む薬が使えるかもしれません」とリール氏は語った。

「ディートのような単一化合物の防虫剤を今まで60年以上も使ってきたのだから、そろそろ次を見つける必要があります」(参考記事:「アメリカ、画期的な虫よけ剤を開発か」

 しかし、化学物質と主な獲物の関連を学習する能力は、今回研究対象となった蚊の種類だけにしかない可能性もある。例えば、西ナイル熱を伝染させる蚊は本来鳥の血を吸うが、鳥がいない場合には人間の血を吸うようになる。リッフェル氏によると、これまでの研究では、ネッタイシマカとは異なり、この蚊には人間を避けることを学ぶ能力がないようだ。(参考記事:「西ナイル媒介蚊、熱波と生物種の関係」

「蚊に学習能力を身につけさせることはできません。能力があるかないかです」とリッフェル氏は言う。

 驚くことではありません、とリール氏は話す。「人間も一緒ですよ。人間にも、匂いがわからないものはたくさんあって、そういうものに気づいていないだけです。蚊もあらゆることに反応するわけではありません」

 科学者は、新たな防虫剤を開発するより、蚊の行動において学習と匂いが果たす役割に関する研究を続ける必要があるだろう。さしあたり、今のところは単純に動き続けることがリッフェル氏のアドバイスだ。「屋外でバーベキューをする場合、叩こうとしたら蚊はあなたを覚えるでしょう。踊って、活発に動いて! そうすれば、蚊は誰か他の人のところに行きますよ」

ナショジオの写真で見る100年前の蚊対策(写真クリックでフォトギャラリーへ)
防蚊ネットの米英対決 「米国製の防蚊ネット(左)は、英国製(右)のものよりも広い視界と快適な通気性を確保できた」と、この写真が掲載された記事に記されている。1926年のナショナル ジオグラフィック誌、アマゾン探検の記事より。(PHOTOGRAPH BY ALBERT W. STEVENS, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

文=Michelle Z. Donahue/訳=牧野建志