古代ローマで大人気、万能調味料「ガルム」とは

発酵させた魚と塩から作る魚醤、交易路の形成にも寄与

2018.01.25
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【参考動画】ごちそうは腐ったサメ肉
アイスランドには、バイキング時代に起源を持つ秘伝のサメ肉レシピがある。(解説は英語です)

グルメも愛したガルム

 現代のワインやチーズに数多くの種類があるように、ガルムにもいくつもの等級と価格が存在し、これは製造に使われている魚の種類や液体の濃度によって異なった。薄いガルムはさほど裕福でない家庭で使われ、ローマ帝国末期のアルモリカ(現在のフランス、ブルターニュ地方)では、軍隊からの大量の需要を満たすために安価なガルムが作られていた。

 一方、富裕層は高級なガルムを買い求めた。大プリニウスが特に好んだのがガルム・ソキオールム(garum sociorum)と呼ばれるもので、これはカルタゴ・ノウァ(現在のスペイン南部、カルタヘナ)郊外で生産されていた。サバをベースにしたこの魚醤を大プリニウスは絶賛し、その香りは最高級の軟膏や香料に匹敵するすばらしさだと述べている。(参考記事:「残念な英雄ハンニバル、「象でアルプス越え」の失策度」

ガルムの輸送ネットワーク

 どこで作られたどんな品質のものであろうと、すべてのガルムは例外なくアンフォラに詰めて輸送された。一部のアンフォラには、ティトゥリ・ピクティ(tituli picti)と呼ばれる文字が刻まれている。この文字は、アンフォラの外面に付けられた“ラベル”のようなもので、中にどんな食材が入っているかを示している。

 ガルムはローマ世界の各地で生産されていたが、イベリア半島には特に多くの塩漬け工場が存在し、その大半がサバあるいはマグロを主な原料として使用していた。現在、この地域にあるエスコンブレラス(Escombreras)という町の名は、ラテン語でサバを意味するスコムブリス(scombris)に由来しており、ローマ時代のカルタヘナにあった漁場の名残を感じさせる。

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