「黒死病」はネズミのせいではなかった?最新研究

中世欧州を襲ったペストの大流行、現代と異なる感染経路か

2018.01.18
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ネズミ=ノミか、ヒト=ノミ・シラミか

 ならば、黒死病はいかにして広がったのか。以前から、ネズミではなくヒトに寄生するノミが原因だったと考える学者もいた。感染した人間から血を吸ったノミやシラミがペスト菌も一緒に吸い取り、すぐ近くにいる別の人間に飛び移れば、その人間も感染する。

 数理的には、ネズミ=ノミとヒト=ノミ・シラミの場合では病気の広がり方が異なるため、ディーン氏のチームはそれぞれにおける感染拡大のモデルを作成した。

「基本的には、数字の処理です。シミュレーションのなかで、人々がどのように移動するかを見ます」。論文の共著者であるボリス・バレンティン・シュミッド氏はそう語る。シュミッド氏は、オスロ大学の計算生物学者で、ディーン氏の研究のアドバイザーでもある。

 これらのモデルで何度も計算を実行したディーン氏とシュミッド氏は、中世の流行中に欧州で発生した9回のアウトブレイクによる死亡パターンに一致するのはどのモデルであるかを、統計的に評価した。すると意外なことに、調査対象になった9カ所の都市のうち7カ所で、ネズミ=ノミよりもヒト=ノミ・シラミの方が死亡の記録と一致したのである。(参考記事:「致死率30%の新興ウイルスが日本に定着している!」

「そもそもアウトブレイクはなぜ起こったのかという根本的な問題に取り組んだ、大変すばらしい研究です」。米国にあるアルゴンヌ国立研究所のシステム科学者で感染症拡大モデルに取り組むチャールズ・マカル氏は、この研究を評価してそう述べた。同氏は今回の研究には関与していない。

 ディーン氏とシュミッド氏は、さらに多くの実験データを集めて、モデルを改善する余地があるとしている。また、この研究が疫病研究者の間で論争を呼ぶだろうということも認めている。なかには、ネズミが中世のアウトブレイクを引き起こしたと言って譲らない学者もいる。

「ペストに関しては、たくさんの論争があります」というが、ディーン氏とシュミッド氏は、自分たちは客観的な立場にいるとしている。「私たちは、このことで得もしなければ損もしませんから」

ギャラリー:コウモリ、黒猫、フクロウなどハロウィンの悪役動物たち(写真クリックでギャラリーページへ)
哺乳類の中で唯一飛翔できるコウモリは、コウモリにしては迷惑な話だが、古くは得体のしれない極悪の生き物とされていた。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

文=Michael Greshko/訳=ルーバー荒井ハンナ

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