アゴダチグモは1億6500万年前の化石種と驚くほど似ており、「生きた化石」と言われる。写真はE. workmaniのオスの成体。(PHOTOGRAPH BY NIKOLAJ SCHARFF)

 アゴダチグモに関することはたいていそうなのだが、ウッド氏の直感もまだ実験で確かめられてはいない。謎は他にもある。これらのクモは、アゴダチグモの仲間と標的のクモをどうやって区別しているのか分からないのだ。

 ウッド氏は、アゴダチグモが同種のクモを食べるのは見たことがないと話す。接触の様子を見ようと、ペトリ皿に複数のアゴダチグモを入れてみたこともあるが、互いに距離を取る以外の行動は見られなかった。

「3匹いれば三角形の配置になりますし、4匹いれば四角形になります」とのことだ。

「アゴダチグモは自分たちの毒に免疫があるのかもしれません」とウッド氏は話す。あるいは、殻(外骨格)がとても頑丈で、攻撃を仕掛けてみることすらしないのかもしれない。

自分の巣にいるE. workmaniのオス。現生のアゴダチグモは南アフリカ、オーストラリア、マダガスカルに生息している。(PHOTOGRAPH BY NIKOLAJ SCHARFF)

“暗殺者”に迫る危機

 新しく命名すべき18もの種を前に、ウッド氏は創造力を働かせた。例えば新種の中には、角が頭の上にリング状に並んで王冠のように見えるものがいくつかある。そこで氏は、マダガスカルにかつて君臨した王や女王にちなんだ名前を付けた。

 また、Eriauchenius milajaneaeはウッド氏の娘、ミラ・ジェーンさんにちなんでいる。

「18の新種が発見・記載されたことは、地球上の生命の多様性や、未発見の生物がまだいることをあらためて教えてくれる刺激的な成果です」と話すのは、オーストラリア、クイーンズランド博物館でアゴダチグモを研究するマイケル・リックス氏だ。(参考記事:「【動画】野生タランチュラの命がけの劇的交尾」

 西オーストラリア博物館でクモの仲間と多足類を担当する上席学芸員、マーク・ハービー氏は、「こうした独特の生物が依存している生息地の保護に努めなければならないという点も、再認識させられます」と話す。(参考記事:「50年で200種が絶滅、愛すべきカエル写真13点」

「これらマダガスカルの種は、いずれも島内の比較的狭い範囲で見つかっています。つまり、生息地が減りつづければ、こうした魅力的なクモが大きな打撃を受ける可能性が高いのです」とハービー氏。(参考記事:「【動画】キリギリス7新種を発表、上腕ムキムキ」

「この中の1種たりとも、今起こっている森林の伐採や焼失により絶滅しないよう望みましょう」

ギャラリー:息をのむワイルドライフ写真44点(写真クリックでギャラリーページへ)
ペリカン Kerkini, Central Macedonia, Greece(Photograph by Ruzdi Ekenheim, National Geographic Your Shot)

文=Jason Bittel/訳=高野夏美