海に落ちて28時間、ひとり漂流し生還した実業家

サメやカモメに襲われ死を覚悟、人生を変えた大事件

2017.12.25
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【参考動画】サメによる人間の襲撃は、どのくらいの頻度で起きているのだろう? サメが人間を襲う理由とその対策を知ろう。(解説は英語です)

――そんな絶望的な状況でも、あなたは生き抜く意志を貫くために、いろいろな工夫をしました。

 最初は絶望していました。ここで死ぬのだと思った私は、妻に遺言を書こうと思いました。ベルトを抜いて、金具で皮膚を傷つけてメッセージを書こうとしたのですが、ふと、ばかげたことだと思ったのです。私がサメに食べられてしまったら、メッセージは誰にも読まれません。(参考記事:「【動画】ホホジロザメがダイバーの入った檻に突入」

 ポケットの中に、一枚の紙きれが入っていました。なんとなくそれを水の上に落としてみると、海流にのって遠ざかっていきました。この紙きれが私の命を救いました。私はすべての海流が陸に向かって流れていることを思い出し、海流にのって陸地をめざし、なんとしても南アフリカの家族のもとに帰ろうと決意したのです。

 私は頭を水につけないようにして平泳ぎをはじめましたが、すぐに疲れてしまいました。もう無理だと思ったとき、私の脳が「会社を作れ」と言ったのです。私は自分の口をボブ、左の鼻孔を販売担当取締役のヒラリー、右の鼻孔をマーケティング担当取締役のエミリーと決め、取締役会議を開きました。議題は、いかにしてボブを安全な場所に送り届けるかです。

 私は少々おかしくなっていたと思うのですが、会議はうまくいきました。ボブの声は低く、物言いはぶっきらぼうでした。「頭を上げて、水を蹴り、水を掻くんだ。あんたの腕も足も強靭だ。調子は上々だ、ボス、このまま行くぞ!」。私はヒラリーにどうすれば会社を存続させられるか尋ねました。「数えて、ボス、ひたすら数えるんです!」。私は1001、1002…と数えました。エミリーには、どうすれば会社を水に浮かせられるか尋ねました。「歌うんですよ、ボス」。私たちは歌いはじめました。クンバヤを歌い、ビートルズを全曲歌い、ビージーズも歌いました。歌は苦痛から気をそらすのを助けてくれました。(参考記事:「恐ろしくも美しきサメ、フォトギャラリー10選」

――消耗してくると、いろいろな幻覚を経験しましたね。

 海に落ちて12時間が過ぎた頃、雲の中で聖母マリアに会いました。激しい雨が降り、大量の水を飲んでしまったのです。その瞬間、雨が消えてなくなり、聖母マリアが現れました。本当にリアルでした。私は自分がこう言ったことを覚えています。「これは何ですか? あなたは何かの合図なのですか? 私はここで死ぬのですか? さよならを言わなければならないのですか?」(参考記事:「聖母マリア 愛と癒やしのパワー」

 17世紀のオランダ東インド会社の帆船も見ました。索具のきしむ音や、船員が側面のはしごを下りてくる音も聞こえました。彼らは私に「お若いの、泳ぎなさい!」と言い、私は「若者扱いをしてくれてありがとう!」と答えました。本当に鮮明で、リアルでした。南アフリカに帰国したときにスポーツ科学者にこの話をしたら、「このときのあなたの脳は、生き残ろうとしてあらゆるものを作り出していたのです」と言われました。(参考記事:「生と死 その境界を科学する」

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