海に落ちて28時間、ひとり漂流し生還した実業家

サメやカモメに襲われ死を覚悟、人生を変えた大事件

2017.12.25
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
真夜中に船から海に落ち、28時間漂流していたブレット・アーチボルド氏が、通りかかった船に救助された瞬間。(PHOTOGRAPH COURTESY OF BRETT ARCHIBALD)
[画像のクリックで拡大表示]

 南アフリカの実業家ブレット・アーチボルド氏は、船に乗る人なら誰でも一度は想像するであろう、最も恐ろしい悪夢を経験した。インドネシアへのサーフィン旅行の途中、夜間に船から落ちたのだ。その瞬間を見ていた人は誰もいなかった。彼は死を覚悟したが、医師が可能と考える時間よりはるかに長い、28時間以上も水面に浮かび続け、救助された。

 アーチボルド氏は著書『Alone: Lost Overboard in the Indian Ocean』の中で、その恐ろしい夜の出来事について語っている。ナショナル ジオグラフィックはニューヨークで彼に会い、彼がいかに生き延びたかを聞くことができた。(参考記事:「ありえない生還劇:名作『白鯨』の元ネタは、もっと壮絶だった」

アーチボルド氏の著書『In Alone:Lost Overboard in the Indian Ocean』(COURTESY OF ST. MARTIN'S PRESS)

――あなたが船から落ちた2013年の夜のことを聞かせてください。

 40代になってから、幼なじみのグループでサーフィン旅行をするようになりました。場所は、インドネシアのスマトラ島西岸沖のムンタワイ諸島です。私たちは飛行機でスマトラ島のパダンという町に行き、そこから船に乗り込みました。

 途中で、特大のカルツォーネ(チーズとハムを詰めて半円形に折ったイタリアのパイ)を3枚買いました。船の上でカットすると、鼻をつくような匂いがしました。口に入れてもまずかったので、数口食べてやめました。

 船は川を下り、海に出ました。私は船室に入って眠りましたが、夜中の1時半ごろ、気分が悪くなって目を覚ましました。私はトイレに駆け込み、吐きはじめました。汗をかいていたので、新鮮な空気を吸うために甲板に出ました。

 甲板の手すりにもたれて3回ほど吐きました。3回目に吐いたとき、「次に吐いたら気絶するかもしれない」と思ったのを覚えています。

 次に気が付いたとき、私は水にもまれていました。船から6メートル下の海に落ち、船の下に引き込まれていたのです。洗濯機の中にいるような感じでした。ようやく海面から頭が出たときには、遠ざかる船が残していった白い泡の中にいました。ただひとり、夜の海に取り残されたのです。(参考記事:「ありえない生還劇:自分の腕を切り落として窮地を脱出した男」

――ヒッチコックの映画『鳥』のような目にあったとか。

 カモメに襲われました。水中でうとうとしていたとき、後頭部にゴツンと来たのです。続いて、左目と鼻のところで血と羽根が飛び散りました。2羽のカモメが私の頭上を飛び回り、急降下したり、ギャーギャー鳴いたりしていました。あれは怖かったです。カモメはしばらくして飛び去りましたが、私に希望を与えてくれました。カモメが飛んで行く方向に陸地があるということですからね。(参考記事:「鳥 大特集2018」

 サメもぶつかってきました。これですべてを終わりにできると喜んで水中に潜りましたが、サメは私をちらっと見ると、興味をなくして泳ぎ去ってしまいました。拍子抜けしましたね。その後、カツオノエボシに刺されました。

 最悪だったのは小さな銀色の魚です。この魚が、半ズボンから出ている脚の後ろ側の皮膚をかじるのです。両脚を蹴るように動かし、大声を上げ、水をバシャバシャやっても、魚は離れませんでした。これまで生きてきたなかで一番怖かったですね。(参考記事:「美しくも危険な「電気クラゲ」にご用心」

次ページ:生き抜く意志を貫くための工夫

おすすめ関連書籍

奇跡のサバイバル60

大震災、飛行機脱落、登山事故、誘拐・・・・・・絶体絶命の状況から九死に一生を得た人々。生死を分けた判断、状況は何だったのか?ストーリー仕立てで臨場感あふれる文章と、脱出ルートをたどる詳細な地図、豊富な写真や資料で、奇跡の生還劇60本をドラマチックに再現します。

定価:本体2,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加