サンタを信じる人ばかりではない

 サンタが善意の人なのは間違いないが、物議を醸しているのも確かだ。今もやむことがない議論は、彼1人の責任を超えている部分も多い。

 ロシアでは、サンタクロースがスターリンと衝突した。

 ロシア革命以前、この地域ではジェド・マロース(吹雪のおじいさん)という人物がクリスマスのシンボルとして敬愛されていた。オランダのシンタクラース同様、サンタの原形らしい特徴を備えた存在だ。ボウラー氏は、「ソビエト連邦ができると、共産主義者たちはクリスマスを祝う習慣も、贈り物をくれる人物もなくしてしまいました」と話す。

「1930年代になるとスターリンはジェド・マロースの再登場を認めました。クリスマスではなく、新年を祝うプレゼントの贈り手としてです」とボウラー氏は続けた。ロシアからクリスマスをなくす試みは最終的には失敗した。サンタとの混同を避けるため青い服を着せ、宗教色を消したジェド・マロースをヨーロッパ中に広めようというソビエトの取り組みも、やはりうまく行かなかった。

 ボウラー氏は、「ソ連は第2次世界大戦後、ポーランドやブルガリアなどでもプレゼントの贈り手を交代させようとしました」と説明する。「ですが、各地の人々はそれをしぶしぶ受け入れただけで、1989年にソ連が崩壊すると、自分たちの伝統に回帰しました」(参考記事:「国境に分断され「王国」を宣言した先住少数民族」

 今も、サンタは世界中で政治性を帯びている。米軍は第2次大戦終結から間もない数年間で、気のいい男性というサンタのイメージを各国に広めた。ボウラー氏によれば、おおむね歓迎されたという。戦争による荒廃から復興中の地域では、サンタが米国の気前良さのシンボルと受け止められたのだ。

 しかし今日、多くの国でサンタは嫌われ者のリストに入ってもいる。キリストをなおざりにしたクリスマスの商業化を代表するためか、あるいは単によそ者だからだ。「チェコ、オランダ、オーストリア、ラテンアメリカといった地域では、いずれもサンタ反対運動が根強くあります。地域に固有のクリスマスプレゼントの贈り手や関連する習慣を守り、北米のサンタに取って代わらせまいとしているのです」

 サンタクロースへの関心の高まりが、そのような取り組みによって止まることはおそらくなさそうだ。しかし、クリスマスイブの多忙なサンタのスケジュールに、少し余裕を作り出すことはできるかもしれない。(参考記事:「真夏にサンタ大集合、熱気あふれる写真23点」

文=Brian Handwerk/訳=高野夏美