サンタの歴史:聖ニコラウスが今の姿になるまで

ギリシャから北欧を経て世界に広まったサンタクロースの歴史

2017.12.19
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 その役目は多くの場合、乳飲み子イエスに回された。贈り物がある日も12月6日からクリスマスに移ったとボウラー氏は話す。「ですが、乳飲み子にたくさんの贈り物は運べませんし、あまり怖くもありません。そこで、幼いキリストにこわもての相棒が与えられました。そうして乳飲み子にふさわしくなさそうな、プレゼントを運ぶ、子どもたちを脅かすといった役割を担うことになったのです」(参考記事:「イエス・キリストとはどんな人物だったのか?」

 ドイツで生まれたこれらの恐ろしい人物の中には、ニコラウスの特徴を再び取り入れたものもあったが、もはや聖人ではなく、ルクラウス(Ru-klaus、荒っぽいニコラウス)、アシェンクラス(Aschenklas、灰色のニコラウス)、ペルツニッケル(Pelznickel、毛むくじゃらのニコラウス)など、子どもたちを脅す相棒になっていた。彼らは子どもたちに良い行いを求め、さもないとむちで打ったり、さらったりするぞと警告した。赤い服を着た陽気な男性とはだいぶ違って見えるが、こうした多彩なキャラクターが、のちにサンタ自身の変化に関わっていく。(参考記事:「クリスマスの悪魔、クランプスの起源」

米国での聖ニコラウス

 オランダでは、子どもたちもその家族も、贈り物をくれる聖ニコラウスへの敬愛を捨てなかった。オランダ人たちは「シンタクラース」とその不朽の名声を新大陸の植民地に持ち込み、ドイツで贈り物を届けていた毛深く恐ろしい者たちの伝説も、そこで生き続けることになった。

 だが、建国間もないころの米国では、クリスマスは今とだいぶ異なっていた。ニューイングランドではこの祝日は避けられ、それ以外の場所では異教の収穫祭のようになっていた。「祝祭の様子は、屋外で浴びるように酒を飲む、町や村を挙げての荒々しいどんちゃん騒ぎでした」とボウラー氏は話す。「英国イングランドでも似たようなものでした。魔法を使うプレゼントの贈り手は、特にいませんでした」

 様相ががらりと変わったのはその後、19世紀の前半のことだ。クリスマスを家族で祝う行事にしようと、何人もの詩人や作家たちが尽力した。その結果、復活させられ、人物像を作り直されたのが、聖ニコラウスだった。

【動画】聖ニコラウスとは誰なのか?
聖ニコラウスは、今やサンタクロースとして世界中で愛される人物になった。彼のイメージは、年月を経る中でどう変化したのだろうか。(解説は英語です)

 ワシントン・アーヴィングの1809年の著書「ニッカーボッカーのニューヨーク史」で、パイプを吸い、空飛ぶ馬車で家々の屋根の上を飛び回るニコラウスが初めて描かれた。善良な少年少女にはプレゼントを、悪い子にはむちに使う小枝を配っていた。

 1821年には、作者不詳の挿絵入りの詩「子どもたちのお友だち」が、現代のサンタ像にぐっと近づき、ニコラウスとクリスマスの関連を強めた。「ここでやっと、サンタクロースの外見が固まり始めました」とボウラー氏。「不思議な力でプレゼントをくれるという聖ニコラウスの要素はそのままに、宗教的な特徴は除き、ドイツで贈り物を配っていた毛むくじゃらのキャラクター同様に毛皮を着せました」

 この人物は良い子たちにプレゼントを届けたが、詩によれば木の枝で作ったむちを配ることもあり、「徳の道を子どもが拒むとき、親の手に使わせるため」とされた。サンタの簡素な馬車は1頭のトナカイが引いていたが、サンタもトナカイも、翌年に大きな変化を遂げる。

 1822年、クレメント・クラーク・ムーアが「聖ニコラウスの訪問」を著した。「クリスマスの前の晩」というタイトルでも知られている。自身の6人の子どものために書いたもので、生まれて間もないサンタクロース現象を盛り上げるつもりはなかった。翌年に匿名で出版されて以降、サンタは恰幅が良く、愉快で、おなじみの8頭のトナカイがそりを引くというイメージが今日まで定着している。(参考記事:「もうすぐクリスマス、働くサンタクロース」

「これが一気に広まりました」とボウラー氏は話す。ただし、想像に任せている部分もまだ多い。19世紀のサンタは服の色もまちまちで、大きさも小人から巨人まであり、さまざまな人物の姿を取ったりしていた。ボウラー氏は、「私が持っている中に、とても面白いサンタの絵があります。ジョージ・ワシントンそっくりで、ほうきの柄にまたがっているのです」

 サンタは等身大の大人で、赤い服をまとい、トナカイが引くそりに乗ってやってくるというイメージに統一されたのは、ボウラー氏によれば19世紀後半のことだそうだ。

 いったんイメージが確立すると、今度は北米のサンタがヨーロッパに逆輸入された。怖い姿でプレゼントを持ってくる人物に取って代わり、ペールノエル(フランス)、ファーザークリスマス(英国)など、国ごとに名前が付いた。「中世後期に生まれたグリム童話型のキャラクターを、彼がかなり和らげて今に至っています」とボウラー氏は話す。

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