中南米に残るジャガー信仰、人をのみ込む秘薬

先住民にあがめられる一方、その優美な姿がジャングルから消えつつある

2017.11.29
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 古代文明のオルメカ、マヤ、アステカ、インカの人々は、ジャガーを神としてあがめ、神殿や王座、水差しの取っ手、リャマの骨で作ったスプーンにその姿を彫った。また、紀元前900年頃、ペルーに台頭したチャビン文化では、ショールや死者を包む布地のモチーフにしている。アマゾンの先住民族のなかには、ジャガーの血を飲み、心臓を食べ、毛皮をまとう人々がいた。人間はジャガーに生まれ変わり、ジャガーは人間になれると、多くの人々が信じていたのだ。

 現在、ジャガーは本来の生息地の半分以上を失ってしまったが、この古代のジャガー崇拝の名残は至るところに見られる。メキシコ南西部のチラパ・デ・アルバレスで、毎年8月に開催される祭り「ティグラダ」もそうだ。ジャガーの仮面と斑点模様の衣装をまとった住民たちが街を練り歩き、ジャガーの姿をした神、テペヨロトルに雨の恵みと豊作を祈願する。

 このジャガー崇拝の最も神秘的な形が、シャーマンと、彼らがつかさどる独特な精神世界だ。数千年間、アマゾン北部の先住民が、精神に作用する植物の力を借りながら探求してきたもので、精霊の助けによって、あらゆる病の原因と治療法を見つけられるという。ジャガーはそこで、人間の味方として、守護者として、生命力あふれる存在として君臨してきた。

 地球上で最も多彩な生態系が広がるアマゾンの湖や川、動物、そして推定8万種の植物には、それぞれに精霊が宿っているという。病を治し、さまざまなものへ姿を変え、闇の力から人間を守るとされるジャガーは、そうした世界の頂点に立つ存在なのだ。

※ナショナル ジオグラフィック12月号特集「失われゆくジャガーの王国」では、南北米大陸のジャガー文化とこの動物の危機を特集します。

Chip Brown/National Geographic

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