チームは、アルカリミギワバエを複数の異なる溶液に沈めてみた。すると、湖水を濃くした場合に、ハエが簡単に溺れるようになることがわかった。その原因は炭酸ナトリウムだった。炭酸ソーダとも呼ばれる炭酸ナトリウムは、洗剤として使われているが、古代エジプトでミイラの下処理にも用いられていた。(参考記事:「アリを「ゾンビ化」する寄生菌、脳の外から行動支配」

 炭酸ナトリウムの濃度が高いと、毛と毛の間に水が入り込みやすくなり、ハエの体は気泡を維持することが難しくなる。毛で覆われたアルカリミギワバエは、これに適応するためさらに毛を増やすよう進化した。厳密にいえば、研究チームが比較した他のハエと比べて、アルカリミギワバエの毛の量は平均で36%多かった。その毛はさらに、撥水性の高い特殊なワックスで覆われている。自動車や靴にワックスを塗るのと同じ効果がある。

小さなものの大きな影響

「こうした微細な構造による適応によって、アルカリミギワバエはほかの動物がほとんど生息できない限られた環境で生存できるようになったのです」(参考記事:「「精液の質」で相手選ぶ、ハエ生殖戦略に新説」

 そして、それが地球の生態系に重要な意味を持っていると、バン・ブリューゲル氏は指摘する。モノ湖は、ハエを捕食する200万羽以上の渡り鳥の中継地となっており、カリフォルニアカモメの85%が、モノ湖に浮かぶ島々に巣を作っている。(参考記事:「【動画】キリギリス7新種を発表、上腕ムキムキ」

 今回の発見は、ハエの体毛という微細なものの進化が、生態系やそれ以上のレベルに大きな影響を与えうることを示す一例である。

文=Austa Somvichian-Clausen/訳=ルーバー荒井ハンナ