新石器時代のワイン、世界最古の残留物を発見

東欧の国ジョージア、ワイン造りのルーツ

2017.11.16
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 この分析結果に加え、壺の外側に施されていたブドウの装飾、現場の細かい土から発見された大量のブドウの花粉、放射線炭素年代測定で紀元前5800~6000年と特定されたことなどから、ガダチリリ・ゴラの人々は世界最古のワイン醸造者であったと考えられる(ワインではないが、中国の賈湖(ジアフー)遺跡からは、それよりもさらに1000年前に穀物や野生の果実を混ぜて発酵させた飲み物が存在していた証拠が見つかっている)。(参考記事:「中国の皇帝が使った青銅製の酒器」

 村の土からは、ブドウの種や茎があまり見つかっていないため、ワインの醸造はブドウ畑があった丘で行われていたのではないかと考古学者は考えている。

ワイン用のブドウは、ジョージアにあるカフカス山脈の麓が発祥といわれる。ここを原産とするブドウの種は500種にのぼる。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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「より涼しい環境でブドウをつぶして発酵させ、小さな壺に注ぎ入れ、飲める状態になってから村へ運んだのではないでしょうか」と、カナダ、トロント大学の考古学者スティーブン・バティウク氏は語る。同氏は、ジョージア国立博物館のミンディア・ヤラブズ氏と共同で発掘調査を指揮した。

 これよりも後の時代になると、ワインの酸化を防いだり不快な味を隠すために松脂やハーブが使われるようになった。現代は、同じ目的で亜硫酸塩が使われる。マクガバン氏の化学分析からはそのような残留物が検出されなかったため、まだ初期の醸造実験の段階にあったと思われる。当時、ワインは季節的な飲み物で、醸造した後酸っぱくなる前に飲まれていたということだ。「松脂は使われていなかったようです。世界最初の純粋なワインということですね。まだ、樹脂が酸化防止になるということは知られていなかったのでしょう」と、マクガバン氏は説明する。

 この研究によって、人間が農耕と牧畜を覚え、定住して生活するようになった新石器時代の新たな一面が明らかになった。その段階的な変化は「新石器革命」と呼ばれ、ガダチリリから西へ数百キロ離れたアナトリアで紀元前1万年頃に始まった。(参考記事:「ヨーロッパの農業伝播は地中海経由か」

サツナヘリと呼ばれるジョージアの伝統的なワイン用酒槽で、ブドウを踏みつぶす醸造者。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 人々がアルコールに関心を持つのに、それほど長い時間はかからなかったようだ。農耕が始まってからわずか数千年後に、ガダチリリの人々は発酵のやり方を学んだだけでなく、ヨーロッパブドウを栽培し、品種改良し、収穫するようになった。「彼らは、移植法や製造方法など、ブドウ栽培の研究を重ねました。人間がいかに発想力に富んだ種であるかを示していると思います」(参考記事:「オランダが救う世界の飢餓」

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