浮くボールでどうやって?
別の実験では、先の課題で優秀な成績を収めた2匹のアライグマに、2種類のボールが与えられた。水に浮く軽いものと沈む重いものだ。このとき、アライグマは同じように沈むボールを使って水位を上げるだろうと研究者は予想した。
浮くボールではうまくいかないはずだ。「ただし、アライグマが役に立たない物を役に立つ物に変えられるなら話は別です」と、論文の共著者である、米ワイオミング大学動物行動・認識研究所所長のサラ・ベンソン=アムラム氏は話す。
2匹はまたしても予想を上回り、浮くボールを繰り返し押し込んで、「しぶきが細切れのマシュマロを跳ね上げる」ことを発見したのだ、とスタントン氏は述べている。
うち1匹はさらに、文字通り独自のひねりを加えた。「その場でボールを回転させる」ようにして、ボールにくっついたマシュマロを食べたという。
このような課題を解決するとき、アライグマは「その並外れた能力、つまり敏感で器用な手を使って世界を切りひらくのです」とマクドナルド氏(今回の研究には関わっていない)がコメントしている。
マクドナルド氏、スタントン氏、ベンソン=アムラム氏などの研究者は、よく裏庭に現れ、害獣と言われることも多いこの動物を研究し、その行動への理解を深めることで人間との摩擦を減らしたいと考えている。(参考記事:「都会でサバイブするアライグマ」)
ほかに合格した動物はカラスや大型類人猿ぐらい
このイソップ寓話式テストでは、アライグマが成績優秀だったとは必ずしも言えないものの、その解決法は非常に斬新だった。
ほかの動物でこのテストに合格したのは、カラス(ニューカレドニアガラス、ミヤマガラス、カケスなど)や大型類人猿など、わずか数種である。(参考記事:「【動画】賢い鳥、イソップの難題をあっさり解決」)
例えば、ある実験では、オランウータンたちが口いっぱいに含んだ水を筒の中に吐き出し、底にあったピーナッツを浮かせて取るという方法をすぐに考え出した。(参考記事:「オランウータン 樹上の危うい未来」)
別のテストでは、数匹のチンパンジーがこの解決策を見つけ出した。そして1匹は、筒の中におしっこをすれば同じ結果が得られることに気がついたそうだ。(参考記事:特集「動物の知力」)