鳥の標本を扱ったデュベイ氏とフルドナー氏は、まるで新聞紙にさわっているようだと表現した。すすは鳥の体から容易に落ちないが、鳥を扱うときにつけた手袋はインクが付着したように黒くなる。

 鳥から得られたデータを見ると、黒色炭素の量は米国の環境規制や燃料消費に関する歴史データに呼応して推移していることが明らかになった。例えば、大恐慌時代に石炭の消費が落ち込んだ頃、鳥の羽に付着したすすの量も少なくなった。しかし第二次世界大戦中、製造業が盛んになると、鳥の羽は再び黒く染まった。(参考記事:「最も汚染された街、デリーの写真28点」

1906年(上)と2012年(下)のワキアカトウヒチョウ(Pipilo erythrophthalmus erythrophthalmus)。(PHOTOGRAPH BY CARL FULDNER AND SHANE DUBAY, THE UNIVERSITY OF CHICAGO AND THE FIELD MUSEUM)
[画像をタップでギャラリー表示]

トランプ大統領はクリーンパワー計画を撤回

 鳥の標本が歴史的資料になるとは意外だが、これは過去の話だけに留まらない。米国では、粒子状物質の飛散がかなり落ち着いてきたが、完全に消えたわけではない。米国肺協会によると、今でも喘息や肺疾患などを悪化させることがあるという。(参考記事:「中国、大気汚染で8歳の少女が肺癌に」

「黒色炭素は、気候変動を強力に促進させる物質であることがわかっています。そして、世紀の変わり目には、以前考えられていたよりも黒色炭素の量が多かったことも明らかになりました」と、デュベイ氏は言う。「この研究結果が、黒色炭素の気候への影響についての理解を深める助けになればと願っています」

1907年(上)と1996年(下)のイナゴヒメドリ(Ammodramus savannarum pratensis)。(PHOTOGRAPH BY CARL FULDNER AND SHANE DUBAY, THE UNIVERSITY OF CHICAGO AND THE FIELD MUSEUM)
[画像をタップでギャラリー表示]

 化石燃料をめぐっては、いまだに激しい議論が続いている。トランプ政権は10月9日、オバマ大統領によるクリーンパワー計画を撤回すると発表した。同計画は、州ごとに石炭の燃焼量を削減するなど、様々な規制を設けた包括的政策だった。

 それが、黒色炭素にどう関係してくるのだろうか。

 世界の黒色炭素の大部分は発展途上国から排出されているが、北極評議会によれば、米国でも2011年に51万トンが排出されたという。そのほとんどが、ディーゼル車など交通機関によるものだが、石炭を燃焼する発電所からも少なからず排出されていた。

「この研究は、汚染の原因である低品位の石炭離れがいつ起こったかを示していますが、現在、私たちはほかの化石燃料についても同様に重要な転換期に来ています」と、デュベイ氏は述べた。

1906年(上)と1996年(下)のヒメドリ(Spizella pusilla pusilla)。(PHOTOGRAPH BY CARL FULDNER AND SHANE DUBAY, THE UNIVERSITY OF CHICAGO AND THE FIELD MUSEUM)
[画像をタップでギャラリー表示]

文=Sarah Gibbens/訳=ルーバー荒井ハンナ