ネズミ退治にホームレスのネコを起用、米国

ワシントンDCの路地裏に新しく赴任した保安官は、ホームレスのネコだった

2017.10.04
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 市長の命により、ワシントンDCの市職員は二酸化炭素を発するドライアイスの球を巣の中に入れてネズミを窒息させたり(巣の中には9~15匹ほどのネズミがすんでいる)、ネズミの歯が立たないゴミ箱を配布するなど、あらゆる面からネズミ駆除に取り組んでいる。

 だが、ネコにネズミを退治させるという活動は、市が行っているのではない。2017年1月に、非営利団体の「ヒューメイン・レスキュー・アライアンス」が始めた「ブルーカラー・キャット・プログラム」という取り組みで、ミソはこの第44代目のネコとして「雇われた」。野ネコを捕らえて去勢手術と予防接種を施し、ワシントンDCの路地へ放す。住人や事業主はネコにエサを与え、屋根付きの寝床を設置することに同意し、その見返りとしてネコが本能に従ってネズミを退治してくれることを期待する(ネコは一般的に、エサを与えられても狩りをする。腹が減ればより多くのネズミを退治してくれるのではと期待してエサを減らすことはしないようにと、同団体は住人に呼び掛けている)。

「私たちにとって何よりも重要なのは、このプログラムでネコの命を救うことです」と、ヒューメイン・レスキュー・アライアンスのローレン・リプシー氏はいう。ネズミを退治してくれるなら喜んでエサをやるという人は多いので、住人にもネコにもメリットがあると、彼らは考えている。リプシー氏によると、今のところ、ネコの世話をする人々も満足しているようで、ネズミの数も減り、死骸が見つかったとの報告もある。(参考記事:「野外のネコは排除されるべきか、米で議論」

【動画】野ネコに取り付けたカメラから、ネコたちの狩りの様子が明らかに。(解説は英語です)

「イエネコでは相手になりません」

 ネズミ駆除の方法はほかにもあるが、例えば毒のエサは死に至るまで長い時間がかかり、ネズミにとっては「恐ろしく残酷」であると、リプシー氏はいう。また、ペットやほかの野生動物まで誤って殺してしまうこともある。

 罠も、あまり好ましい手段とは言えない。ミソがパトロールしている路地で、住人のマーク・ポー氏が自分の仕掛けた罠を指さして見せてくれた。罠にはネズミがかかっているが、けがをしているもののまだ生きている。ネズミは尾を挟まれたまま罠を引きずって逃走し、金網フェンスに引っかかって動けなくなると、振り向いてこちらをじっと見つめた。

「ごみ収集日の前夜になると、ネズミの数が増えます」とポー氏。あまりに多いので、エアガンのターゲットにして遊ぶ住人もいる。ポー氏は、新たに加わったネコにもあまり期待はしていない。「結局何も変わらないと思いますよ。いつまでたっても、出るものは出るんです」

 だが、英ブリストル大学のイヌとネコの行動学専門家ジョン・ブラッドショー氏は、ネコが正しい評価を受けていないのではないかと話す。「テリアとイエネコは、昔からネズミ対策として飼われてきました。米国や英国の田舎では、今でもそのために飼っている人は多いです」(参考記事:「ネコは自ら家畜化した、遺伝子ほぼ不変、最新研究」

 また、野ネコとイエネコとは大きく違うという。「成長したネズミは、ネコにとってはかなり手ごわい敵ですから、ほとんどのイエネコは近づこうとしません。ネズミにどう対峙するべきかを母親から教え込まれた野ネコでないと相手になりません」

「ブルーカラー・キャット」からネコを雇った住人たちは、その結果に満足しているようだ。DCにある地ビール工場では、山積みにされた麦の袋を目当てに、ネズミたちがやってきていた。そこに派遣されてきたネコに、社長のソー・チェストン氏は「バーリー(大麦という意)」と名を付けた。「以前は、罠をあちこちに仕掛けたり毒入りのエサを置いたりしていましたが、どれも効果はありませんでした」と、従業員のK・C・ピアースさんは語る。「ところが、ネコがやってきたら効果は抜群。それ以来ネズミは1匹も見ていません」

次ページ:イヌはチームで高速退治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加