【動画】心痛む、ロヒンギャ難民の危機(解説は英語です)

 ミャンマーの少数民族ロヒンギャは今、「世界で最も迫害されている民族」と呼ばれている。9月28日には、ロヒンギャ難民を乗せてミャンマーからバングラデシュに向かった船が転覆し、多数の死傷者が出た。彼らが直面している危機、暴力を象徴する出来事だ。(参考記事:「処刑、掃討、性暴力、世界で最も弾圧されている民族ロヒンギャ」

 2017年8月からこれまでに、少なくとも50万人ものロヒンギャが隣国バングラデシュに避難している。危機が著しく深刻になったのはここ数カ月のことだが、ロヒンギャに対する迫害は今に始まったことではない。

 ロヒンギャとはどのような民族なのか、何が起きているのか、ミャンマー国家顧問のアウン・サン・スー・チー氏は何をしているのか、ナショナル ジオグラフィックはミャンマーの専門家3人に意見を聞いた。

ロヒンギャとはどんな民族か?

 ロヒンギャは、バングラデシュのすぐ南に位置するミャンマー、ラカイン州のイスラム系少数民族。人口は一時期、100万人に達したこともある。

 ミャンマー政府は、ロヒンギャを市民として公式に認めていない。彼らはミャンマーが英国の植民地だった時代にバングラデシュから移住し、不法にミャンマーに居住している民族である、というのが政府の見解だ。一方のロヒンギャ側は100年以上前からこの地域に住んでいると主張、なかには8世紀から居住していたと語る人もいる。

「この問題には諸説があり、簡単に決めることはできません。とりわけ政治的に論じようとする人の間では難しい」と、他国の民主化を支援している全米民主主義基金のアジア地区副所長、ジョン・クナウス氏は語る。

 ミャンマーに居住するようになった時期はさておき、ロヒンギャは1982年、最近までミャンマーを支配していた軍事政権に市民権を剥奪された。そうして国籍を失った彼らは、よるべのない身となった。(参考記事:「ロシア極北のトナカイの民 ネネツ」

ロヒンギャの人々に何が起きている?

 報道によると、ミャンマー警察と軍部がロヒンギャに対し、広範囲にわたる組織的な迫害を加えたという。これを受け、国際連合人権高等弁務官のザイド・フセイン氏は、「民族浄化の典型的な例」と評した(民族浄化は、民族もしくは宗教集団を威嚇や暴力によって強制的に排除することを指す)。

 一方のミャンマー政府は報告書の中で、ロヒンギャに対し組織的暴行が行われた証拠はないと主張。ただし、国連や外部組織、ジャーナリストがこれについて独自に調査する許可は出さなかった。

「ロヒンギャの危機」を伝える情報の大半は、バングラデシュへ逃れた難民からの情報に基づいている。彼らは集団レイプ、大量殺人と残忍な暴行を受けたと、国連人権高等弁務官が2月に発表した報告書にある。報告書のインタビューに答えた女性の半数以上は、性的暴行を受けたとされる。(参考記事:「最悪の瞬間はレイプの後に訪れた、弾圧される民族ロヒンギャ」

 ロヒンギャの集落が燃えている衛星画像も公表されている。火をつけたのはミャンマー軍部だと難民は訴えているが、軍部はロヒンギャの仕業であると主張。英国放送協会(BBC)のジョナサン・ヘッド特派員は、ラカイン州内に入ることを許された数少ないジャーナリストの1人だが、視察中も政府による厳しい監視下にあった。村を訪れた際に、ロヒンギャが自分の家を燃やしていると思われる写真を渡されたが、その後偽造されたものであることを発見した。

 インドには、4万人のロヒンギャが居住しているが、避難民として公式に登録されているのは、そのうちの1万6000人だ。ミャンマーを逃れたロヒンギャの大多数は、バングラデシュに留まっている。今年の夏にインドとバングラデシュを洪水が襲った影響で難民キャンプの状況は悪化、コレラが発生し、水が不足し、栄養失調が起こっている。(参考記事:「バングラデシュ 船の墓場で働く」

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