ネアンデルタール人はゆっくり成長した、研究成果

現代人と同じくらいのペース、ゆっくりと大きな脳を育んだ

2017.09.22
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慎重論

 今回の研究では1体の骨格しか調べられていないこともあり、すべての研究者がロサス氏の主張に納得しているわけではない。

 スイス、チューリヒ大学の古人類学者マルシア・ポンセ・デ・レオン氏とクリストフ・ゾリコッファー氏も、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスと同じようなペースで成長していたと主張している。彼らはロサス氏の研究を全体としては賞賛するが、J1の脳の成長ペースが現代の子どもよりゆっくりしていたと考える統計的証拠はまったくないと指摘する。

 そもそも、大人のネアンデルタール人の脳のサイズには大きなばらつきがある。J1の脳は大人の脳にしては小さいが、J1よりも小さな脳をもつ大人のネアンデルタール人の例もあったし、J1より幼いネアンデルタール人が、より大きな脳をもっていた例もある。

 ポンセ・デ・レオン氏とゾリコッファー氏は、「エル・シドロン洞窟の少年が死んだときの脳の大きさはわかりましたが、彼が大人になったときに脳がどのくらいの大きさになっていたかは見当もつきません」と言う。「とはいえ全体として見れば、この論文は、ネアンデルタール人の成長のペースが(少なくとも私たちと同じくらい)ゆっくりしていたことを裏付け、『ホモ・サピエンスの独自性』の主張を退けるものだと言えるでしょう」(参考記事:「ヒトはなぜ人間に進化した? 12の仮説とその変遷」

 米ハーバード大学のターニャ・スミス氏はネアンデルタール人の歯の専門家だが、やはりロサス氏らの結論に疑問を投げかけている。彼女は、ロサス氏のような主張をするにはJ1の歯の年齢を正確に推定できている必要があるが、彼らの手法はいくつかの仮定に基づいていると指摘する。ゾリコッファー氏やポンセ・デ・レオン氏と同じく、彼女もまた、J1の脳のサイズが平均より小さいことだけを根拠に成長の途中であると考えることはできないと言う。

「成長のペースにばらつきがあることは、ホモ・サピエンスを見れば明らかです。たった1体の化石から広範な結論を導き出すことはできないと思います」(参考記事:「アイスマン その悲運の最期」

文=Michael Greshko/訳=三枝小夜子

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